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笑顔の村で人生の楽園を見つけたパン屋さん
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笑顔の村で田舎暮らしを始めた夫婦が「半農半パン屋」の生活を楽しんでいる。あのW杯サッカーでカメルーンチームが合宿し有名になった日田市中津江村の下筌(しもうけ)ダムに沿った県道脇に「焼きたてパン」の手作り看板が立っているのに気づいて数ヶ月。何でも「北九州から田舎暮らしを求めて入村してきた夫婦がパンを焼いている」と聞き、「こんな田舎でパンを売っても生計が成り立たないだろうに」と同情しつつも関心を持っていた。
ところが先日、「人生の楽園」という某TV局の番組でそのご夫婦が紹介されたのだ。北九州市で1級建築設計事務所を営んでいた吉田希世士さん(65歳)は1999年6月、バブルの崩壊で仕事が激減、先細りの設計事務所をたたんで憧れていた「ログ建築の仕事をしたい」と日田市上津江町内のログハウスメーカーに入社し単身移住したが先年退社。そして、田舎の長閑さと人情に惹かれるまま標高650mの中津江村八所地区にログハウスの自宅を新築してしまった。
その間、奥様の敏子さん(63歳)は北九州市で会社勤めをしながら菓子作りなどの趣味に没頭していたが、離れ離れの生活に離婚の危機を感じて3年前に愛犬とともに中津江村に移住して来た。
元来「孤独が好きで他人と交わるのが苦手」な希世士さんを当初村人は「無口で他所から来た怖い人」と少し退いて遠巻きに見ていた。ところが、奥様が移住して来てその雰囲気が一変する。積極的に地域に溶け込んで行く敏子さんの姿に地区の人々も理解を示すようになったのだ。今では、休耕地を貸したり、田植え、稲刈りの作業も手伝ってくれたりするようになった。
野菜作りなど農業のいろはも教えてくれる。「手間換え」(互いの労働を加勢をする)という地域伝統の共同扶助習慣にも慣れた。
吉田夫妻の「お礼」は自慢のパン。農作業の合間に自作のパンを馳走する。これが引き金になって、村内でログ建築業を営む「蜂の巣工房」の社長から「工房の隣に妻が使っていたパン焼き窯があるので使ったら?」という有難い勧めで今年1月に手作りパン屋「霞洞」を開店。店名は、狭い林道を上り詰め、雲海の中に霞んだ八所集落に初めて足を踏み入れた時「仙人の住む桃源郷のように感じた」ことから付けたという。
月曜日から木曜日までは自宅の菜園で剪定や草むしり、週末には朝早くからパン作りに追われる毎日。「夢のような日々ですよ」と希世士さんが語る傍で妻の敏子さんがニッコリと微笑む姿に羨ましいような感動を覚えた。
パンは自作の小麦(ミナミノカオリという品種)を石臼で挽いた全粒粉を市販の粉と混ぜる。「分量は企業秘密よ」と敏子さん。地域で採れるシイタケとチーズのフォカッチャ、オリーブ油を塗り岩塩をかけたフォカッチャはワインのツマミにも最適だ。その他、グリーンピース、夏ミカン、リンゴ、たかな漬けの入ったパンまで11種類100個。卵や保存料、合成着色料も一切使わず、どっしり重くて噛み応えのあるパンには吉田夫妻の人生を凝縮させた愛情に溢れている。
パン屋の営業は週末の金・土・日の3日間、開店時間はパンの焼きあがる午前11時から。売れても売れなくても午後4時には閉店する。「パン屋は年金生活の片手間の仕事、ゆったりと楽しくやれればいい」と欲もない。
まさに「人生の楽園」に生きる吉田夫妻に「いつまでもお元気で! そして仲良くね!」とエールを胸に靄に霞んだ仙人の里? を後にした。
(大分県日田市在住・50代の昆虫ライター/佐々木 茂美)
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◇◆「手作りパン屋 霞洞」DATA◇◆
住所:大分県日田市中津江村栃野5323-1 蜂の巣工房敷地内
TEL:090-4778-5012(吉田敏子)
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