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わが青春の喫茶店。エゴノキのある店で
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鉄路の無い田舎町(茨城県猿島郡境町)に珈琲舎売子の木(えごのき)はある。訪れるのは20年振りだ。
門からテラスを通って入り口の引き戸を開けるとカップルが一組、注文した料理が出来上がるのを待っていた。築80年の解体古材を利用して建てられた店内は開店30年を経てますます怪しげである。庭には店名由来のエゴノキがあり、付近のスポーツ施設からは学生達の声が聞こえる。
「昔は部活の帰りの高校生で溢れていたのよ」と女店主は窓から遠くを見て呟いた。今でもその頃の大盛りピラフは人気の一品らしい。
「気取った顔してマンデリンを注文してコーヒーシュガーを三杯も入れてミルクたっぷりいれてスプーンでグルグルかき回して飲まれたらイヤになっちゃってさ」
それからストレートコーヒーは止めたそうで、今はブレンドとアメリカンのみ。店主のこだわりを押し付ける店は駄目だと言われているが、そんなの関係ない。
「いいのよ来たい人だけ来てくれれば」それに「明日閉めちゃうかもしれないしね」。
確かに末期かも。エアコンは壊れて暖はテーブルごとの石油ストーブだし、BGMはNHK第一放送が大きめの音量で流れている。昔高校生で溢れていた20席ほどの別室も灯りが消えていた。
それでも骨董品のようになってしまったカップ達やテーブルのシュガーポットは手入れが行き届いている。ケーキセットを注文した。味は昔のままでファミレスの比ではない。もう大盛りピラフは無理かもしれないけど、次回はシナモントーストを食べようと思う。カップルの食事が終わり後片付けは相変わらず手際が良い。「お茶飲むかい?」「薬飲むから水もらえる」「やだよ病人ばかりだね」いつの間にか女店主はお客さんと相席している。それにしても居心地が良い。結局はこういう店を目指したのだと思う。夜はバーにしたらステキだなんて想像もしたけれど……珈琲&婆なんて当て字になるのだろうな。
「ごちそうさま、また来るね」「嫁いだ娘がもう仕事止めろって言うんだよ」「そんなこと言わないでさ、せめて庭のエゴノキが白い花をつけるまで続けてよ」
外に出ると雪が降ってきた。「こんな日はさっさと臨時休業だよ」。おやおや。
(余暇活動家/秋山 明彦)
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◇◆DATA◇◆
場所:茨城県猿島郡境町大字上小橋564-5
地図
定休日:第1第3木・金曜日
開店:11時30分‘頃’
閉店:日没
予算:500円〜1500円
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