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“先送り”から一転、オオクチバス指定! 外来生物法


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 「暴走族の騒音でお悩みの皆さーん! お待たせしました、画期的な暴走族取り締り法が新しく施行されます。この法律によって、暴走行為をしたものはただちに逮捕され、莫大な罰金を科されることになります! 」
「おお、それは素晴らしい! これでやっと夜も安心して眠れるというものですね!」
「その通り! ただし、オートバイと普通乗用車での暴走行為は規制対象になっていません。規制されるのはトラクターやショベルカーなど特殊用途車両での暴走行為だけです」
「……んん? なにそれ? それじゃぜんぜん意味ないじゃん」
「いやー、オートバイや自動車のメーカーとかの業界団体がうるさいし、取り締まるのも人手が足りないのでね、あしからず」

 ……といった笑い話にもならない状況になりかねなかったのが、以前にもお知らせした「外来生物法」。日本の在来生物の生態系や農林水産業などに被害を与える外来生物を輸入したり野外に放したりすることを厳しく取り締まる法律です。いよいよ、この6月から法律が実際に施行されるにあたり、どの外来生物を規制対象となる「特定外来生物」に指定するかを検討する専門家会議が去年から今年にかけて開かれていました。

 ところが、6月から規制がはじまる「第一次指定リスト」から、外来生物問題の象徴ともいえるオオクチバスを外すように、あろうことか法律を所管する環境省の事務方が自ら決めてしまったのです。まさに暴走族取り締り法でオートバイでの暴走行為を規制対象から外すようなもの。その理由が「オオクチバス利用者(バス釣り愛好家や釣り具メーカーなどの団体)からの指定反対の声が大きく、指定すると混乱が予想されるから」といったものですから、これではいったいなんのための外来生物法なのかわかりません。半年後の追加指定も視野に入れられていましたが、これも確固たる前提ではなく、うやむやにされる怖れがあったのです。

 当然、バスの被害に悩んできた自治体や環境保護団体などは猛反発し、メディアも疑問の声を連日報道。これに慌てたのか環境大臣が「法律の趣旨からして、まずは指定すべき」と爆弾発言。環境省の事務方が業界などに配慮していた“根回し”のちゃぶ台をひっくり返してしまった格好で6月からの一次リスト指定がほぼ決定。今月31日の専門家全体会合で正式に決まる予定です。

 オオクチバスは指定がきまったものの、毎年何十万匹もが輸入され、その大部分が飼い主から野外に捨てられているミドリガメ(ミシシッピーアカミミガメ)も「販売業者や飼育者が多く指定すると混乱が発生するから」という理由で第一次リストは外されています。ミドリガメって、原産国のアメリカでは危険なサルモネラ菌の宿主として州境を越えての移動や逆輸入が禁止されている“札付き”の生き物(でも輸出は自由)なんですよ。他にも栽培農家の受粉用に利用されているセイヨウオオマルハナバチなど、大きな問題が指摘されている外来生物の大部分が指定から漏れているのが現状です。

 利用者が多いことを指定先送りの理由にしているけれど、要は取り締まる体制を作れていないだけのこと。「環境省は規制する側の都合ばかりで法律の原則を見失っているのではないか」、という批判にもうなずけます。

 ちなみに今回、第1次指定が決まった外来魚はオオクチバス、コクチバス、ブルーギル、チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)の4種。他に指定が内定していたカムルチー、タイワンドジョウ、ノーザンパイク、ヨーロッパオオナマズは先送りとなります。他にも在来の渓流魚を駆逐するブラウントラウトや、ニッポンバラタナゴとの交雑が危機視されているタイリクバラタナゴ、メダカとの競合が問題のタップミノー(カダヤシ)など多くの外来魚がありますが、今回の指定の対象ではありません。

 ここで、外来生物法の規制内容をもう一度簡単におさらいしましょう。まず、指定された「特定外来生物」が規制されるのは輸入や野外への放逐、許可のない飼育や生体の移動などです。オオクチバスにあてはめると、密放流は禁止・罰則の対象になりますが、釣りそのものや、釣ったバスをその場ですぐに放すキャッチ&リリースは規制されません。つまり、「普通のバス釣り愛好家」は今までと何も変わらずにバス釣りを楽しめるのです。暴走族取り締り法で一般のライダーやドライバーが規制されないのと同じですね。

 この規制に反対する団体は「バス釣りのイメージがよけいに悪くなるから指定しないで!」と主張していました。これは奇妙な話。暴走行為をきちんと取り締まることで健全なライダーの社会的評価が守られるように、密放流を規制する法律を整備したほうがバス釣りのイメージ悪化を防ぐことになるというものです。また、たとえば周囲をフェンスで囲まれたゴルフ場跡地を再利用しての「バス管理釣り場」なども、バスが持ちだされないように適正管理すれば認められるので、新ビジネスのビッグチャンスなんですよ。

 一方で、「法律での規制など待っていられない!」とばかりに、各地でバスの駆除活動が展開中。琵琶湖では有志団体の「琵琶湖を戻す会」「外来魚バスターズ」が釣りによる外来魚駆除活動を展開し、滋賀県は釣ったバスをエコマネーの「ノーリリースありがとう券」で買い上げる制度も試行し、巨大な網カゴ式のトラップやバスの不妊化手術法など様々な対策を開発しています。

 さらに宮城県では駆除用の人工産卵床を用いた繁殖阻止、北海道では電撃ショックでバスを捕える通称“ショッカーボート”の導入、中禅寺湖では地曳き網と水中スクーター&水中銃での捕獲作戦などが展開中。

 来たる1月30日には琵琶湖博物館ホールで全国の駆除事例を紹介するシンポジウムが開かれます。その名も「バス完全駆除へのシナリオ」。各地での様々な駆除の取り組みが紹介されます。当日は人工漁礁と釣り筏を用いた“駆除筏作戦”や冬期に漁港に集まるバスの習性を利用した“漁港丸ごとかい掘り作戦”などの新戦術も発表される予定。雑魚釣り王国・ニッポンを復活させるには、骨抜きの法律などあてにしないほうが早いかもしれません。未来の“バスバスターズ”を目指す方には必見のシンポジウムですぞ。

(ライター/多田 実



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