バナー

両生類に広がる恐ろしいツボカビ症に、どう対処する?


●WWFジャパン公式ホームページでは、「カエルツボカビ症」についての詳しい情報を掲載しています。かえるを飼育している方も、野生動物の今後を心配されている方も、ぜひご一読ください。
 去年から今年にかけて、カエル好き、いや自然好きの私たちにとってちょっと心配なニュースが流れてきたことをご記憶でしょうか?
 それはオーストラリアや中米でカエルなどの両生類に深刻な被害を与えたツボカビ症という皮膚病が、昨年末に日本でも初確認されたというもの。一旦発症してしまうと効果的な治療法がなく、死亡率は9割を超えるといわれています。つまりカエルだけの問題ではなく、カエルが食べていた虫や、カエルを食べていた他の動物にも影響があることは確実で、生態系がズタズタになる可能性すらあるのです。私たちも無関心ではいられません。

 日本野生動物医学会、日本爬虫両棲類学会、WWFジャパンなどの関係団体は、異例の早さで「カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言」を出し、専門家として速やかに行動計画を策定し、可能な限りの努力をすると言っています。しかし「そんな治療も困難な病気が、もう日本国内に入ってしまったのなら、どうしようもないのでは……」と暗くなっている方のために、これまでにあまりマスコミで紹介されていないことも含めて、この問題の要点をお伝えしたいと思います。

 野外でカエル類の生態を研究している東邦大学理学部の長谷川雅美教授は、次のように話してくれました。
 「一旦野外に出てしまったら、ツボカビを根絶させることは不可能です。飼育下で発症したカエルと飼育容器を適切に処分し、野外への逸出を防がなければなりません」
 もし飼育しているカエルの様子がおかしいと感じたら(元気がない、触っても反応が鈍いなど)、すぐに獣医師に相談して検査をしましょう。そして飼育水は、けして外に捨てないこと。60度以上のお湯で15分煮るか、器具類も含めて薬剤で消毒します。もし感染して死亡したカエルは、可能なら焼却します。清潔なビニール袋に密封して生ゴミとして出し、焼却してもらうのもよいでしょう。いずれの場合も、死体と水を絶対に外に出さないことが必要です(ツボカビは、野外でも7週間は生きているそうです)。

 きちんと管理できる飼育下なら、薬剤による消毒によって他のカエルへの感染を防ぐことも可能なので、落ち着いて対処してください。現在何らかの形でカエルを飼育している人は、麻布大学のHPで「ツボカビ症に関する解説書」「ツボカビに関するQ&A」をきちんと読んで理解しておく必要があります。

 さて、今の段階ではこの菌を「自然界に出さない」ことが最も重要なことですが、万が一フィールドで何か異変を感じたら、どうすればいいのでしょうか?
 慶応大学生物学教室の福山欣司助教授が運営している「カエル探偵団」のHPでは、暫定版ながら「野外におけるカエルツボカビ症発見マニュアル」が発表されています。それによれば(1)目立った外傷がない、(2)同じ場所でたくさん死んでいる、(3)何日も連続して死体が見つかる、(4)死体の発見場所が広がっていくなどの項目に2つ以上当てはまる場合は、「カエル探偵団」に連絡をして欲しいとしています。

 また、こうしたときには発見者の衣服や靴、車のタイヤなどに、知らないうちに菌が付着して運ばれる可能性もあるので、それに対する注意が必要です。うーむ、まだ屋外には出ていない今が、いちばん大事な時期なんですね。

 ただ、明るい材料もないわけではありません。カエルの持つ免疫システムはあまり発達しているとはいえないのですが、それを補うようにカエルたちは、細菌や菌類に対して免疫効果を持つある種の抗菌ペプチド(アミノ酸の鎖)を体外に分泌することがわかってきたのです。アカガエル類には、ツボカビに対しても効果のあるペプチドを分泌する種類が見つかっています。しかし、日本産両生類のどの種がツボカビに免疫があり、どの種にはないのか、まだはっきりとはわかっていないので油断はできません。とはいえ、自然の仕組みの奥深さに、改めて驚かされますね。

 しかし長谷川教授は、「人の健康に直接被害を及ぼさなくても、自然の生態系に配慮し、きちんと検疫を行なったうえで○○は輸入してもよい、そうでなければ原則輸入禁止という体制が必要な時代になってきているのです」と話し、今後はこのツボカビ症に限らず、もっと広い視野で病原微生物が生態系の維持に及ぼす影響や動植物の移動を考えていかねばならないと指摘しています。
 新たな試練に直面したカエル君に、エールを送りたいですね。

(ライター/シュレーゲル三宅)



TOPへ新製品ショップ話題フィールドメディア
ご意見・お問い合わせair BE-PALとは?Privacy Policy


 © Shogakukan Inc. 2003 © 村上康成
 All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
 掲載の記事・写真・イラスト等、すべてのコンテンツの無断複写、転載を禁じます。