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新宮に伝わる不思議な樹木、天台烏薬
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♪まぼろしの まぼろしの 不老長寿の 薬を求め 蓬莱めざして……
鳥羽一郎が歌った「徐福(じょふく)夢男」の出だしで、星野哲郎が作詞した、なかなかいい歌です。
神仙の術にたけた方士・徐福は、紀元前3世紀、秦の始皇帝の命を受けて「不老不死」の霊薬を求めて蓬莱の国をめざした、と中国の史書にでています。たどりついたところははっきりしませんが、有力な渡来地のひとつが和歌山県新宮市で、見つけた霊薬が天台烏薬(てんだいうやく)というクスノキ科の樹木といわれています。遠い昔のことなのに、今も、市民たちは「徐福さん」と親しみを込めて呼び、この古代史ロマンの歌は、市内のスナックのカラオケでよく歌われています。
天台烏薬は、常緑の低木で、四季折々に楽しめますが、とても不思議な樹木です。葉と枝、幹は、お茶や入浴剤。
実はワインや染色。成分が凝縮した根は医薬品や化粧品。1本の木をどこも捨てることなく、丸ごと、いろいろなものに利用できるのです。
10年前、森昭胤・岡山大学名誉教授の研究で、天台烏薬の根に成人病、リウマチ、心臓病などをもたらす活性酸素を、除去する効果があることがわかりました。5年前には、岐阜大医学部の研究グループが、心臓病への効能、肺がん細胞の増殖を抑える働きなどを突き止め、臨床治療ができる段階になりました。さらに和歌山県工業技術センターが薬品の製造に取り組んでいます。
伝説の霊木が、近代医学の薬木として注目されだすと、商品開発が活発になってきました。天台烏薬は、独特の苦味や香りがあり、食品には不向きといわれていましたが、さまざまに工夫して、町には、これまで市販のお茶、入浴剤、ワインに加え、天台烏薬入り商品があふれだしました。
喫茶店では、葉と枝を煎じた汁でゼリー。パンの専門店では、葉の粉末と大納言小豆をミックスした天然酵母のパン、いずれもおいしいと評判のヒット商品です。このほかにも、うどん、てんぷら、梅干、干菓子、和菓子……。2200年前の徐福さんからのメッセージが、いまよみがえってきているようです。
☆天台烏薬は中国原産で日本の南西部にあるとされていますが分布についてはよくわかっていません。紀伊半島南部には分布しており、新宮市では25年前から増殖、現在は17万本があります。
(熊野の住人/岡田 正毅)
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