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初夏の季語「松蝉」の主は……


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 季語にある松蝉は、マツ林で5〜6月頃に鳴くハルゼミを指すという。
 6月のある日、セミの大合唱を聞きに日光は千手ヶ原を訪れた。低公害バスに揺られること30分。バスを降りると同時に、梢から「ミョーキン、ミョーキン……ミョーケケケ……」というけたたましい声。ハイカーの何人かは、「何の声かしら?」と言わんばかりに空を見上げている。

 声の主は、ハルゼミの仲間のエゾハルゼミ。北海道から九州まで分布し、産地では数も少なくない。北海道や東北では平地から低山地に見られるが、関東以南では標高700m以上の山間に限って分布する。見られる林はいろいろで、ブナの林、マツの林、モミの林など。マツにこだわるハルゼミとはエライ違いだ。

 一方、ハルゼミは日本全国に分布するわけではなく、北関東から九州の平地や低山地に見られる。近年、都市周辺ではマツ枯れや開発による林の消失などで、姿を消しているのだ。また、北関東などの北限地では、もともと分布自体が限られる。ハルゼミ情報を全国から収集すると、分布しないハズの東北や北海道からも「いた!」という情報が寄せられるが、これはエゾハルゼミという、よく似た種類の誤認によると考えられる。

 さて、千手ヶ浜に着いた私はと言えば、ハイカーを尻目にすでにセミ観察モード。エゾハルゼミの多くは梢の高いところで鳴いているが、下草の上や地面で鳴いているものもいる。飛びそこねて落ちてしまい、面倒になってその場で鳴き始めたのであろうか? セミの自覚を持って木で鳴いてもらいたい! と、つい突っ込みたくなる。
 鳴くところはお構いなしのようだが、日照にはちょっとうるさい。少しでも曇ってくると鳴き方が鈍り、完全に曇るとぴたっと鳴き止む。雨の日はもっと愉快だ。傘をさして林の中を歩きながら、下草などを丹念に見てゆくと、葉っぱの上にセミが止まっている。エゾハルゼミだけでなく、エゾゼミやコエゾゼミなど、普段、高い梢で鳴いていて姿を見ることも難しいセミが拾えるのだ。もちろん運がよければだが、雨の高原での楽しい宝探しのひと時である。
 さて、千手ヶ原をはじめ、各地でエゾハルゼミは旬を迎えます。初夏の花をめでながら、エゾハルゼミの大合唱を聞く。そんな贅沢な一日はいかがでしょうか?

(槐 真史・学芸員/自然しらべ2007・夏休み セミのぬけがらをさがせ! 学術協力)



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