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最後のマタギに聞いた白神山地のいま
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ビーパル7月号の特集で、世界遺産白神山地のマタギに会いに行ってきました。65歳の現役マタギ、工藤光治さんです。(山と生きるマタギの知恵は、本誌7月号P43をご覧ください!)
マタギとは、東北地方や信越地方で、独特の狩猟方法や信仰を持った狩人集団のことです。おもな獲物はツキノワグマ。毛皮は衣服や敷物に、熊の胆は万病の薬として重宝されてきました。マタギの仕事は猟だけではありません。山菜やキノコ、イワナ釣りなど、一年を通して山に入り、山の恵みで生きてきたのです。
工藤さんは、そんなマタギの生活を後世に伝えたいと、エコツアーガイド『白神マタギ舎』を2000年に設立しました。一般のお客さんのガイドはもちろん、ボランティアで地元の中学生なども森の中を案内しています。工藤さんはまさに森の生き字引。一歩足を森の中に踏み入れると面白い話がつきません。
たとえば、ブナが地中の水を吸い上げる音の話。このブナの木を見てください。訪れる観光客がブナの幹に耳をあてるために根っこがあらわになり、傷つけられています。
「実は、ブナが水を吸い上げる音って聞こえないんです。ある大学の教授が聴診器を持ってきて、聞いてみたんです。確かに音はする。ところが、下山して、電信柱の木に同じように聴診器を当てたところ、同じ音がした(笑)」
と工藤さんは人懐っこい笑顔でいいました。
白神山地が世界遺産に登録されてから今年で13年。当時を振り返り、工藤さんはいいます。
「白神山地のど真ん中を貫くスーパー林道建設反対のために、世界遺産登録に賛成しました。とにかく、白神の自然が残せるならと。登録され、スーパー林道建設は中止になりました。でも、私たちの生活の一部である熊狩りや山菜とりが自由にできなくなったのです」
しかし、世界遺産登録によって、熊や山菜をとるマタギの生業が環境破壊だと非難する環境団体が現れました。そして、ついに2005年、白神山地の野生動物を保護しようと世界遺産登録地域での狩猟は禁止になりました。毎年、春には5頭以上捕えていた熊も、2006年には0頭、今年はわずか2頭しか、捕ることができませんでした。
マタギは、誰よりも白神山地に対して謙虚なのです。熊も山菜も必要な分だけしかとりません。山菜は当たり前のことですが、根っこを残し、適切な部分を少しずつ採取します。
「1000年以上も私たちの祖先が手を入れて見守ってきた森なのに、地元の人まで締め出されてしまいました。熊などの動物は、安全な登録地域に密集し、増え続けるでしょう。国は昭和33年にカモシカを特別天然記念物として保護しました。いまや増えすぎて害獣と言われている。これから、白神山地の生態系がどう変化するのか心配です」
いままで、人が猟をして、山菜をとって、魚を釣って、保たれてきた白神山地の自然。白神山地から食物を得て、一緒に生きてきた人がいたからこそ、白神山地は世界遺産に登録されたのではないでしょうか。
(新潟農家のセガレライター/森山 伸也)
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◇◆参考HP◇◆
『白神マタギ舎』
白神山地ビジターセンター
白神山地世界遺産センター
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