 |
 |
渓流釣り場は出産ラッシュ
|
休日には家族連れの釣り客で大賑わいの、わが町唯一の観光スポット「フィッシングパーク」も梅雨に入り川の水が増え、家族連れの素人にはせいぜい3〜4匹がいいところ。だが逆に20数匹も釣り上げるプロ並みの客もいるそうだ。しかし平日には「閑古鳥が鳴いている」というので訪ねてみると予想通り釣り客はポツポツだったが閑古鳥ではなく本当の野鳥が鳴いていた。
標高800mの渓流一帯は野鳥のさえずりに満ちていて、私に解るだけでもキセキレイ、ウグイス、ヒヨドリ、オオルリ、ガビチョウ、ホオジロ、カワガラス、ヤマバト、カワラヒワといった野鳥の鳴き声が川のせせらぎに混じって、客のいない釣り場のどこからともなく聞こえてくる。なかでもキセキレイは広い駐車場をチョンチョンと尾で地面を叩くように我が物顔で歩き回ったり、建物のテッペンに止まって誇らしげに美声を披露している。
クチバシに虫を咥えたキセキレイを追ってみると、何と釣り場脇にあるバーベキューハウスの軒下から侵入しているではないか。ハウスの梁には小枝や枯れ草で作られた巣があり、すでに雛もいるらしい。管理人に尋ねると「釣り場設備の至るところに巣が作られているようですが、無関心を装ってヘビなどに襲われないようにも気遣っています」という感服する返事が返ってきた。
撮影をしようとハウスの梁の巣を覗くとモヌケの殻で、焼肉網の上に1羽、床に3羽が鳴きもせず、キョトンとした眼でジッと立っていた。何かのせいで巣から落ちたのだろうが、私がハウスに入る時、親鳥たちがハウスの周りでイヤに騒々しく鳴いていたのはこのためだった。脚立を借りに行くと「そう言えば、昨日アオダイショウがハウスの近所にいたな」と言う。
ともかく4羽を巣に戻してひとまず帰宅し、翌日またハウスを訪れると今度はちゃんと巣の中で親鳥を待っている幼鳥がいた。待つこと2時間。おずおずとハウスに入って来るツガイの親鳥がカワゲラなどの虫を与える瞬間の撮影に成功。巣の中の糞を運び出す姿も撮影できた。
「事務所の換気扇にも鳥が巣を作ってますよ」と教えてもらって釣り場のすぐ隣にある事務所の換気扇を覗くとコケで作られた巣があった。まだ卵もないようなので主は解らないが、渓流でよくチッチリリリーと鋭い美声の「ミソサザイに違いない」とここでもねばること数日。ついに主が姿を現した。やはりミソサザイであった。野鳥の会の友人に聞くと「普通、渓流近くの岩の間や朽木の下などにコケで巣を作る。換気扇などに作るのは珍しいですよ」とのこと。わずかな出生率の上昇に騒ぎまくる昨今の人間界。「野鳥の世界に異常気象の影響は? 出生率は?」と出産ラッシュのフィッシングパークで思わず考えさせられた。
(大分県日田市在住・50代の昆虫ライター/佐々木 茂美)
|
|