 |
 |
京の「始末」文化。その真の豊かさを知る―番茶編―
|
前回は煎茶の話でした。今回は、番茶の出番です。京番茶(きょうばんちゃ)という種類があるのはご存知でしょうか。京都では、子どもの頃から特に親しみ深く、お水代わりに飲んでいるお茶です。
遊び疲れて家に帰ると、おやかんにいっぱい京番茶が入っていて、いぶしたような香りを楽しみながら、ごくんごくんとそれを飲む、「ぷはぁー」。これが「おぶ」でした。うちでは、大人は煎茶をいれ、子どもは作り置きの番茶を飲む、というのが定番でした。カフェインが少ないことから、子どもでもがぶ飲みのできるお茶だったわけです。宇治田原町の京番茶は、新芽を摘んだ後の古い葉を、揉まずに開いたままの状態で強い蒸気で長時間蒸し上げ、天日干しで乾燥させ、焦げ目がつくくらいまで炒って作るお茶のことをいい、やかんで煮出して飲むのです。
こっちのお茶葉は、大きくて茶色がかっていて見栄えも悪いので、茶殻は食べず、昔は玄関のお掃除のときに、埃を吸い取らせて使っていました。他には、下駄箱に入れて臭い取りに使ったり、また、お魚の臭みを取るときも、この茶葉を使ったり、と。お正月の棒ダラもお番茶で下ゆですると臭みが消えるとはご存知の方も多いのではないでしょうか。
そこで、この消臭機能を活かした上で、京番茶を製造する際に出る番茶くずを捨てずに、何とか使えないだろうかと考えられた末、傑作品が出来上がりました。現在、特許出願中、「美月香(みづきこう)」という消臭香です。
考案されたのは、宇治田原町郷之口でほうじ茶や京番茶を製造されている「丸久番茶舖」の小西健一郎さん。京番茶に、お線香に使われる椨(たぶのき)をつなぎとして混ぜて、練り合わせたものです。百聞は一見にしかずと、火をつけてみるといぶされた番茶の香ばしい匂いが部屋いっぱいに漂い、気がつけば臭いもなくなっている……。消臭剤としてだけでなく、これはアロマ・テラピーの効果もあるのではないかしら。
最近、お茶には殺菌作用があるとか、がん予防に効くとか、様々な効用があることで注目されてきています。さらに消臭作用についても、このお茶の成分中に、臭いの分子と化学反応を起こす物質があるということがわかってきました。茶カテキンが有力説ですが、カフェインやビタミンCなどの消臭成分もともに総合的に効くのではないかと言われています。また、消臭という点では、化学反応とともに物理的な吸着作用とも働いているという発表もあり、現在のところその消臭機構が研究されているところです(資料提供:独立行政法人 野菜茶業研究所)。
お茶を摘み、淹れて、遊び、食し、最後は灰になって消えるまで「お茶の時間」を楽しむ。始末の文化と暮らしを豊かにしようとする心が編み出した作品を、どうぞ皆さんお試しあれ。
(京都在住/横田 美行)
------------------------------------------------------
◇◆DATA◇◆
「丸久番茶舖」
代表:小西 健一郎
〒610−0255
京都府綴喜郡宇治田原町郷之口田中5
TEL: (0774) 88-2129
「独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 野菜茶業研究所」
〒514−2392
三重県津市安濃町草生360
TEL: (059) 268-1331
FAX: (059) 268-1339
URL: http://vegetea.naro.affrc.go.jp/
|
|