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完走することに意義あり! サバニ・レース観戦記


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 サンゴでできた白い砂浜。海に向かって舳先を向け、数十艇の小舟が並んでいる。ほとんどが木製。どれも長いマストを立て、数本のエークと呼ばれる櫂を積み込んでいる。おお、カッコいい! この船で、どこまでも透明な水をかき進んだら、どんなに気持ちよいだろう!? 自分でも漕いでみたくなる。

 これは「サバニ」という沖縄の伝統的な船。マストに台形の優美な帆をかけて、数人の漕ぎ手とともに青い海を快走する。セーリングというヨットの要素も、パドリングというカヌーの要素もあるが、「帆」「漕」の力を併用するのはサバニならでは。帆があるとはいえ、そのフォルムは、どちらかといえばカヌーに近い。もともと漁業のための船で、気温が高い沖縄では獲った魚が傷みやすいため、できるだけ早く港に戻る必要があった。そこで高速船「サバニ」が生まれたのだ。

 さて、今回で8回目となる「サバニ帆漕レース」。スタートは沖縄県・座間味島。ここから沖縄本島の那覇港沖までの約31.5キロを、風と潮の流れを読み、チークワークで進んでいく。今年のエントリーは、37艇だ。僕の注目は、ビーパルで連載を持っているホーボージュンさんが乗り、昨年よりも改良を加えた「ニヌハ2」。シーカヤック界の番町格/海洋ジャーナリストの内田正洋さんが乗る「まいふな」。「まいふな」は、アウトリガー(安定を増すための舷側の腕木)をもたない古式サバニだ。それと前回2位ながら、レース後に海旅に出るため、荷物を多く載せられるよう、速度にはマイナスな改造をあえて施した「海想」。そして前回1位の「ざまみ丸」だ。

 6月24日(日)8時、レーススタート。快晴の空の下、真っ白な浜辺から青い海に、サバニがすべりこんでいく。参加者の掛け声と観客の声援で、普段なら波の音ばかりの浜は騒然。エークが白いしぶきを立てる。前日の練習では、出走直後に転覆するサバニを数艇見たが、本番ではどの艇も無事に出発できたようだ。タイムリミットは7時間後の午後3時だ。

 僕たちの乗る観戦用の船は、座間味島の沖で、最後尾付近のサバニに追いついた。先頭との差はかなり広がっている。それもそのはず、ある艇はすでに転覆していて、体勢を直している最中。波に翻弄され、転覆した船体がほとんど見えない。また別の艇は、入ってきた海水をくみ出すのに懸命だ。帆は下ろされ、漕ぐどころではない。サバニは高速性を第一に考え、安定性は二の次。転覆しやすい。沖縄の海は暖かく、海中で凍死する危険はなかったからだ。たしかに、観戦する僕たちの船も何度か大きな波をかぶり、体がかなり濡れたが、寒くはない。むしろ気持ちがいいほど。こんなことをいうと、転覆したサバニの漕ぎ手には申し訳ないのだが。

 先頭のサバニは、はるか前方を突き進んでいた。帆がしっかりと風をとらえている。実はこの日、天気はよいが、コース変更も検討されたほど風が強かった。船は大きく揺らぎ、取材陣にも船酔いが続出。こっそり吐いている人もちらほら。だが、強い風が吹いているということは、船の性能がよく、帆を自在に操れる技術さえあれば、相当な勢いで前へ進めるということでもある。

 少々離れていて確認しにくいが、先頭はディフェンディングチャンピオンの「ざまみ丸」。続いて前回3位の「島童」。「海想」が3位につけているようだ。じめっとしているような、さわやかなような、微妙な潮風に吹かれる船上から水平線に目をこらすが、他の船は小さすぎて判別不能。やはり海は広い。

 結果は、1位から3位まで、そのままゴール。「ざまみ丸」は11時すぎに到着し、3時間5分20秒。これまでの記録を大幅に更新した。「ニヌハ2」は最後に4〜5位争いのデッドヒートでレースを盛り上げ、結局5位。だが自己最高位をマーク! 「まいふな」はブービー。だが「古式サバニ」としてエントリーした3艇のなかでは、唯一の完走だ。扱いにくい古式サバニで、このコンディションを乗り切ったのは、さすがだった。

 完走は27艇。一応「レース」とはいうものの、多くのサバニは「楽しんで完走」を目的としていて、競争というよりはお祭りの感覚だ。そもそもこのレースは、失われつつあったサバニを復活させるために始められたもの。スピードだけが目的ではない。出発前には、特別協賛のヘリー・ハンセンの主導により、出発会場の古座間味の浜を清掃するイベント「ビーチクリーン」も開かれた。サバニとともに日本の海洋文化を後世に継承していく、そんな理念が感じられる。打ち上げ会場ではみな満足気で、飲み干すビールが本当にうまそうだった。

(ライター/高橋庄太郎、撮影/村山 嘉昭)



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