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雄同士の擬似交尾と複雑怪奇な生命の不思議
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野外で昆虫写真を撮っているとしばしば出くわす交尾シーン。交尾中の昆虫の多くはじっとしていて撮影し易い被写体でもあります。そこで、面白い写真をお見せしましょう。カブトムシにニューハーフが?、といった写真です。遺伝子のいたずらで雄と雌の性徴が左右で違うチョウなどの写真を見た方もおられると思いますが、ほとんどの場合遺伝子異常は体の左右に現れます。「上半分が雄で下半分が雌では?」ということはまず有り得ません。では? とその答えは後で述べます。
自然界では多くの種で雄の数が圧倒的に多いのと、羽化するのも雄の方が1〜2週間くらい早く出現することをご存知ですか? これは種を保存するために雄が早目に羽化して、後に出てくる雌を待っているのです。雌が出てくると「待ってました」とばかりに交尾を行います。ですから、ほとんどの雌は相手を探す、あるいは選ぶ余裕もないほど確実に交尾ができる仕組みなのです。
チョウの仲間では一度交尾を行うと雌の交尾器が塞がれ、もう二度と交尾が出来ない体になります。ですから、とろい? 雄は見つけた相手がすべて交尾後の雌ばかりで、ついには交尾をできずボロボロになって死んでゆくという悲しい現実もあるそうですが、これには強い遺伝子を残すという自然界の摂理が働いているといいます。
昆虫の雄雌は種類によって違いますが、2次性徴といってカブトムシのように雄に角があって雌にないもの、クワガタムシのように雄の大顎が大きくて立派なのに比べて雌は小さいものと一目で区別できるものもありますが、テントウムシのように体形に全く違いがないものもいます。カミキリムシでは雌のヒゲ(触角のことです)が短く体が雄より大きいという性徴が見られます。
さて、このカブトムシの交尾ではちゃんと繋がってはいますが、やはり雄同士の擬似交尾でした。採ってきたカブトムシの雄を狭い場所に入れておくとパニック状態に陥り、このような行動に走ることが多くの虫屋仲間の証言から確認されています。
ヒトの世界では別の意味でこういった行動がありますが、そのニューハーフとは別に、戦時中の極限状態におかれたヒトが同じような行動をしたという記録があるそうですから、面白いというより複雑怪奇な生命体の哀れさを思い起こさせてくれたカブトムシの擬似交尾写真でした。
(大分県日田市在住・昆虫ライター/佐々木茂美)
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