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山間の静かな環境に癒された、こんな夫婦も
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人口の流出が続く過疎の村では「田舎暮らし」を求める団塊の世代の人々の入村誘致に躍起だ。ご多分にもれず、私の暮らす津江地方でも山間に散在する集落に空き家が目立っていて、振興局(旧村役場)の係員も希望者には率先して空き家を紹介、案内役を買って出ている。それが功を奏して今年の春、以前紹介した「パン屋さん」のお隣の空き家に一組の夫婦が入居した。
築40数年の古民家の玄関先には「ギャラリィー遥」の手作り看板が掲げられ、草木染の暖簾が下がり、いい感じに変身しているのだ。伺ってみると、玄関にいきなり深紅の打ち掛けが飾られ、二間続きの座敷はきらびやかな着物をまとった創作人形にシックな古布で作ったポシェットや小間物、さまざまな絵や筆文字が描かれた和紙を貼り付けた籠がいっぱい並んだギャラリィー兼作業場になっていた。
平松治二さん(52歳)と智恵美さん(46歳)のご夫婦はそれまで北九州市若松に居を構え、治二さんは電気工事業を、智恵美さんは美容室を営んでいたが、9年ほど前から患った奥様の糖尿病が悪化し入退院を繰り返すようになった頃に転機が訪れた。
美容室の仕事の合間に病気を自力で治そうと気功の修業をしていた頃のある日、「急にお客さんの髪と私の目の間に柔和な童の絵が浮かんできたの」というのだ。元々雑誌に投稿する程漫画を描くのが好きだった智恵美さん、「浮かんでくる童の絵をパステル画で30枚ほど描いたら、ピタッと浮かばなくなった」という神憑りのような話もしてくれた。
創作人形を作り始めたのもその頃からで、作品のファンも現れ、勧められるまま美容室をたたみ、自宅で創作人形作りやパステル画の教室を開くようになった。画に添えられた彼女の筆字も自己流というが味のあるなかなかのものだ。
夫の治二さんも妻の仕事を手伝いながら「何かやってみよう」と参考書を頼りに「一閑張り」を覚えた。「一閑張り」は元々破れた竹篭に和紙を張って生き返らせるリサイクルの手法だという。竹や籐の籠に接着剤で和紙を張り、防虫効果のある柿渋を塗って乾かした後に防水を施し完成する。和紙には様々な絵や筆文字がデザインされるが、この作業は奥様の仕事である。
そして、今年3月、体調が悪くなる一方の智恵美さんのために治二さんは仕事を止めて「どこか静かな場所で妻と暮らしたい」と探し訊ねて辿り着いたのが、この中津江村八所集落だった。
中津江村に居を構え数ヶ月、カッコウの鳴き声やキツツキが木をつつく音を聞きながら過ごす長閑な生活に智恵美さんの体調は奇跡的に快方に向った。「ここに来て、医者にもかからず血糖値も下がり、悩まされていた帯状疱疹も不思議に快癒してしまったの。森の妖精が守ってくれているようだわ」と笑顔で話す。今では月2回、100km離れた北九州市の創作教室に夫婦そろって出かけるくらい元気になった。
「ギャラリィー遥」の開店は週末の3日だけ、他の日は畑仕事や制作に追われる充実した日々という。
団塊の世代の皆さん! 定年後は巷の喧騒を離れた田舎暮らしを本気で考えてみたら? 保証はできませんが、長生きできるかも……。
(大分県日田市在住・昆虫ライター/佐々木茂美)
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◇◆DATA◇◆
「ギャラリィー遥」
住所/大分県日田市中津江村栃野704
TEL/090-7496-9046
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