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キタキツネが暮す場所で。その1『八面相』


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 野生のキタキツネを観察しているといろいろな顔があることに気付く。人間も世界に似た人が3人しかいないというように、キタキツネの世界にも同じ顔を持つものはいないのかもしれない。狐と狸はいつも較べられるもののひとつなのだが、狐は狡さが売り物になっている。いかにも狐代表の、どう見ても笑える顔である。

 しかしこちらを見ると獲物を狙って潜む野生動物以外の何者でもない。一見穏やかそうだがどうもそうではなさそうである。なにかトラブル発生のようだ。やはり他のキツネが自分の縄張りに近づいたのだ。遠くから様子を見てすごすごと引き揚げてゆく姿もまたいじらしい。
 そろそろ一眠りしたくなってきたなぁ。夜行性の連中は昼間は危険が迫らない限り行動がどこか緩慢だ。暖かい秋の陽にウトウトしながらふにゃふにゃと眠ってしまった

 50年も昔ならキタキツネの姿どころか野生動物の姿を見ることなど皆無に近かったのだが、最近はキツネはおろかエゾシカ、ヒグマなど観光資源になるほど目の前に飛び出してくる。
 また観光客がなぜか可愛いといって「餌をあげる」と言う奇妙な言葉と現象がおきて、野生動物の世界に異変をもたらす。山のものしか食べていない彼らが、一度でも人間の食べものを食べるとあまりにも美味しくてはまってしまうのだ。以来人間がやってくると姿を現し餌のおねだりをすることになるのだが、習慣付いてしまうと車がくると飛び出して度々事故がおきる。それも人身事故がおきたりもする。

 ヒグマは登山者を尾行して隙をうかがい、持ち物を狙うようになりとても危険な状況を生む。最近では街中まで徘徊するようになってきた。
 先進国の人間はいずれ豊食の果て崩食を向かえ、滅びゆく運命を背負っているのだから、せめて野生の世界を見習って生き延びる術を学習しておくべきだ。

(北海道在住/藤 泰人)



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