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キタキツネが暮す場所で。その3
『キツネは人を化かすか』
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1945年屈辱的な敗戦を迎えたあと、私の家にも外地引き上げの親類のものたちがひしめいていた。母方の祖母は物静かな人で、奇妙な予知能力を備えていた。
荒野の一軒家のような我が家に引き揚げてきていたが、ある夏の日の暮れ方「蚊退治」のたき火を背にして長いこと立っていたと思ったら、ぽつんと「このあたりには悪さをするキツネがおるの……」とつぶやいているのを聞いた。私がまだ7歳のころだ。
その年の秋、父が魚などの買い出しに出かけ帰ってきたとき、逆さに背負った背中のリュックサックの口が大きく開き、中味は空っぽだった。
数年たった猛吹雪の夜、2kmほど離れた所に戦後開拓者として入植していたおじさんが、迷いに迷って私の家にたどりついたが、私の家を自分の家と間違えて「ヤァひどい吹雪だ」と言って靴を脱いで上がり込んでしまった。しばらくして気がつき首をひねっていたが、がたがたと震えだし「俺はどうしたんだろう」と言ってすがりつくような目で私たちを見つめた目の色が普通でなかったのを覚えている。14歳頃の私が彼の家まで吹雪の中を送っていった。
そんなことが4度あった。いつも南風で猛吹雪になった夜のことだ。
4度目のとき別のおじさんを送っての帰り、南風を背に受けて快適に闇の中をスキースケーティングで流してきたが、突然ピタリと風が止んだ。思わず立ち止まりあたりを見ると完全暗闇でありながら雪が真っ直ぐ空から落ちてうっすらとあたりが見えるような気がする。このときとつぜん私は祖母の一言を思い出した。
「このあたりには悪さをするキツネがおるの……」
私は全身が凍り付いた。思わずあたりを見わたして何もないことを確認するや、一目散家に向かって急いだ。
キツネは人を騙すか。写真をとくと見て皆様のご判断を期待したい。
(北海道在住/藤 泰人)
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