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“スキーで歩いて南極点へ”ツアー顛末記5
遠征の本格開始とピーターの決断…
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ハーキュリーズを出発して4日目、12/1の朝9:30にはパトリオットヒルズに着き、ここで荷物の再調整をして、18日分の食料や燃料、必要な装備などを積み込みました。橇はぐっと重くなりましたが、雪の状態がいいのと平地なので比較的楽な再出発でした。しかもここでは朝食とランチに招待されました。新鮮な野菜のサラダからカリカリのベーコン、焼きたてのバゲットにケーキまでプロのシェフが料理します。パトリオットヒルズホテルと称される所以ですね。おなかいっぱい♪。
しかしのんびりしていられないのが遠征。長い道のりが控えているのです。そしてここからがいよいよ本番。気を引き締めて歩き始めます。
12/6まで5日間は、朝は9時ころスタート、1時間行動して10分の休憩、を5回繰り返し4時過ぎにはテントを張りました。1日およそ15〜19kmの距離を進みました。風もまださほど強くなく、4ノット/hから最大でも15ノット/h。がんばって歩いて行けます。気温は出発地付近で−12℃あたり、内陸へ入って高度を上げてくると、−14.5〜−20.4℃で推移していました。ただ風が加わると体感はぐっと下がります。
予想通り、私を含めてみんなの調子は上がっていったように見えました。しかし……。
12/5、6と、私には1時間の行動が40〜45分程度にしか感じられなくなっていた頃、時がたつのがとても速く感じられるようになってきたとき、ピーターの消耗に気づくことになったのです。カナダの高名な弁護士として活躍する彼は、他方で数々のアウトドアスポーツを趣味として続け、100kmクロスカントリースキー大会に出場したり、トライアスロンに挑戦するなどとても意欲的な人です。今回は70歳という年齢をものともせず、かなりいいペースで一緒に歩き続けてきました。しかし彼は疲れていました。
そして12/6の夕方、ジョンが私たちのテントに来て、今からミーティングをするから大テントに来てほしいと伝えた時のいやな予感……。信じたくなかった。いつものように食事に行くときの袋を持って行きましたが、夕食の用意はなく、私はつらい表情を目にしました。ついにジョンが口を開いた。「ピーターはここで遠征をあきらめる決心をした」、と。
話し合いました。留めようとしました。説明しました。何もかもつらく、苦しいことばかりしかない、それが遠征なのだということを。すべての苦しみ、辛さ、苦々しさ、みじめさが遠征そのものだということ。そしてその命をかけたチャレンジの後にこれら全部の苦しみが輝きとなってその人の心で生涯きらめき続けるすばらしい思い出と変わっていくこと。
遠征を途中であきらめるということが、またチャレンジの機会を失うこともしくは奪われることが、どれほどの痛みとなって人の心に残るかということを。私がこれまで経験してきたことを話して、一緒に続けよう、みんなで一緒に行きたいことを伝えました。
ピーターは私の心を深く理解してくれました。けれどそれ以上に彼の決心は固かったのです。
彼との会話、また今後の夢などについては遠征を離れて以降の心情も追って、ぜひ改めて書きたいと思います。
夢を持つこと、挑戦すること、あきらめることと、あきらめないこと。この素晴らしい巨大な大陸を夢見て、初めての遠征を経験した彼は、きっとこれからも夢を見続けてくれることと信じています。
(登山家・ライター/續 素美代)
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