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ヒッチハイクのチャリンコライダーが行く
「タダ美味」の旅・2「戸隠そば」の巻(後編)
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視界ゼロの吹雪の中、20インチの折りたたみ自転車で山道をひた走る。その先に広がる白銀の山麓から、呑気な声が聞こえてきた。
「冷たい蕎麦と温かい蕎麦、どっちにする?」
温かい蕎麦を注文した僕が値段を尋ねると、蕎麦を手渡したおじさんは笑顔で言った。
「タダだよ!」
そうだ、そうだった。僕はこの“タダの蕎麦”を喰うが為に、3日間、死闘の旅をしてきたのだ。
蕎麦殻(そばがら)の混じった黒い麺は味が濃厚で、麺をすするたびに蕎麦の香りが鼻を通る。近隣の湧水で出汁を取った汁はまろやかで、天を仰ぎながら一滴残らず飲み干した。あぁ、これぞ至福の時だ……。
僕は現在、月に一度旅をしている。目的地は、全国にある“タダ喰いのできるお祭り”だ。移動手段はヒッチハイクと、持参した折りたたみ自転車。タダで行ってタダで喰うという訳だ。
初回の1月には広島県のカキ祭りへ行き、牡蠣料理を喰いまくってきた。2回目となる今回は、長野県の戸隠スキー場が目的地。ここで開かれた「そば冬の陣」へ参加し、戸隠そばを無料で食べてきた。しかし、これが思いのほか厳しい旅となったのだ。
初日は、自宅から関越自動車道の練馬ICまで自転車で行き、そこでヒッチハイク。長野県に入った後は再び自転車に乗り、長野市の中心地へ入った。
2日目に戸隠へ向かうころから環境は険しくなる。数cmだった積雪は1mを超え、気温も夕方過ぎから氷点下になった。僕はひとり雪上にテントを張り(友人の伝で事前に許可を得て、私有地に設営)、身を震わせながら夜を明かした。
3日目の朝、テントを出ると外には雪がチラつき始めていた。テントをたたみ自転車を漕ぎ始めた頃には吹雪となり、横風に荷物をあおられ、タイヤを横滑りさせながら、どうにかスキー場までたどりついたのだ。そして、凍りつきそうな鼻水と涙を顔に貼り付けたまま、ゲレンデの上で温かい蕎麦をほおばったのである。
戸隠そばは、蕎麦粉をお湯で練る製法が独特。水で練るよりも粘り気が強くなり、こしの強い麺が出来上がる。つなぎの量を少なく抑え、色が濃く、香りの深い麺に仕上げる。生活用水として利用している地下水は年間を通して水温が低く、湯から揚げた麺が良くしまる。「水も旨いから蕎麦と一緒に味わえ」と、水切りをあまりしないのが戸隠流。ビショビショに濡れた麺が汁の中に放りこまれていく。
麺の上には汁気の少ない特産の大根、ピリリと辛い「戸隠おろし」が乗せられる。戸隠では定番の薬味で、山葵や七味唐辛子のように蕎麦の風味を消すことなく、汁の味にコクを持たせる。消化酵素のジアスターゼを大量に含んでいる為、胃にもやさしい優れもの。無料ではあるものの、この一杯の蕎麦の中には、戸隠で育まれた自然の恵みがぎゅ〜っと詰まっていたのである。
いたずらに鼻の穴へ突き刺さってくる横殴りの雪も、戸隠そばを育む貴重な糧になるのだと思うと、不思議と憎く感じなかったのでありました……。
このイベント、「そば冬の陣」は3月にも行なわれる予定だ(毎月第4土曜日)。詳細は戸隠スキー場のHPにて確認のこと。行ったことがある人も、ない人も、この機会を逃したらきっと後悔しちゃいますよ!
(ヒッチちゃりだー/村田 貴紀)
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◇◆DATA◇◆
『そば冬の陣』
日程:2008年3月22(土)※蕎麦の配布は15時から
会場:戸隠スキー場
連絡:戸隠観光協会
電話:026-254-2888
◇◆人物(プロフィール)◇◆
ヒッチちゃりだー/村田貴紀
大学卒業後、電機メーカーに就職するが早期退職し、ヒッチハイクと折りたたみ自転車で日本一周の旅に出る。その経験を元に、『寝床の値段』(東京☆一週間・関西☆一週間/講談社)、『ヒッチハイク先生からのお手紙』(不二家Webサイト)、『1日10秒の四字熟語塾』(AOLダイアリー)等の旅コラムを連載。BE-PALでは記者を務めるなど、現在はフリーライターとして活躍中。
HP:http://tabi.cc/
旅ブログ:http://ameblo.jp/kuinige/ ☆メッセージ書き込み歓迎!!
★『タダ美味の旅』バックナンバー★
【1】1月「おおたけカキ」の巻(前編)2008.01.26配信
【2】1月「おおたけカキ」の巻(後編)2008.02.16配信
【3】2月「戸隠そば」の巻(前編)2008.02.20配信
【4】3月「真ふぐ」の巻(前編)2008.03.06配信
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