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ヤスやんのかまど ―お芋でこんにゃく作り―
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ヤスやんの手はゴツゴツしていた。夫の母方の叔母にあたるヤスエさんは、皆にヤスやんと呼ばれる85歳のおばあちゃん。私の家から車で30分ほど山奥に入った田舎で今も野良仕事に精を出し、単車でぶんぶん走り回っている元気な人である。
ヤスやんの家の庭には小さなかまど小屋がある。そこで薪をくべ、いろんなものをコトコト煮炊きしている。もちろん家の中には台所もガスもある。このかまどはヤスやん曰く「遊びや、遊び。火に当たりもぉて、いろいろ作ったら面白いさかのぉ」ということらしい。今回はこのかまどでのこんにゃく作りを見せてもらった。
サトイモ科の植物であるこんにゃく芋は寒さに弱いので、春に小指くらいの大きさの種芋を植え付け、いったん秋に掘り出して倉庫などに保存。2年めの春にまた植えて……をくりかえし、ようやく3年めの秋に収穫するのだとか。ただし、このあたりは温暖な気候なのでヤスやんは畑に植えっぱなしで育てるらしい。
「今日はこれで作ろか」と出してくれたこんにゃく芋はつまり3年もの。ごろんとしていて持つとずっしり重い。計ってみると980gあった。これで売られている普通の大きさのこんにゃくが20個ぐらいできるのだそうだ。
材料は芋約1kgに対し、4リットルのお湯。凝固剤として7、8gの消石灰または25〜30gの炭酸ソーダを200gのぬるま湯で溶いたものを用意しておく。
まずは芋をよく洗って適当な大きさに切り、ゆでる。火が通ったら水にとって皮をむく。ヤスやんは手でガシガシやっているが、肌の弱い人はかゆくなるのでゴム手袋をはめた方がよい。
次にこんにゃく芋と用意しておいたお湯をミキサーに入れ、ガーッと混ぜる(一度では無理なのでこの作業を数回くりかえす)。
これに凝固剤を少しずつ加えながら混ぜると白っぽかったものが灰色に変わり、匂いもこんにゃくの匂いになる。あとは型に入れて煮立ったお湯の中にぽとんぽとんと落とし入れ、10分ほどゆがけばできあがり。
一生懸命レシピを書き止めようとする私にヤスやんは「適当、適当」と、何もかも目分量で大ざっぱに、しかも楽しそうに作業を進めていく。
できたてのアツアツをまずはさしみこんにゃくでいただいた。ぷりぷりっとした歯ごたえはあるが、柔らかくて甘みがある。ほのかにお芋の味もする。おいしいこんにゃくとはこういうものなのだ。ふだんこんにゃくになど何の反応も示さない子どもたちも「これ、おいしい」とパクパク食べていた。
どっさりできたこんにゃく。ヤスやんは「うちはまた作るから」と私にたくさん持たせてくれた。浅黒くて節くれだった手、仕事をしておいしいものを作り出すその手が印象的だった。すき焼きにちぎって入れたり、大根と煮たり、ぴり辛煮にしたり。家でお料理をするたびに、私はヤスやんの手を思い出した。
(エッセイスト/松上 京子)
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