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稲も魚も育っています。「たかしま生きもの田んぼ。」
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「これオタマジャクシかなぁ? あ、ひげがある、ナマズの子や!」
「おお、これ見い、でっかいメダカが採れよったで〜!!」
田んぼ脇の水路で小学生と大人が入り混じり、ガサガサで魚獲りをしつつ歓声をあげる。
梅雨の晴れ間の空の下、滋賀県北西部の高島市で展開中の「たかしま生きもの田んぼ。」で、地元の小学生の総合学習の時間を活用した「生きもの調査」が行われた。水路で捕れた小魚たちはすぐ上の田んぼに放流され、成長や繁殖の手助けにもつながる催しにもなった。
「ふるさとの自然の豊かさを見つけることできました。ありがとうございます」
たどたどしくも声をそろえて御礼の挨拶をする小学生たち。それを受ける農家の皆さんも「いやぁ、本当に楽しかった」と照れ笑い。田んぼが地域の笑顔と歓声をも生み出した一日となった。
トキやコウノトリこそいないけれど、田んぼの生きものたちの顔ぶれの豊かさ、にぎやかさでは全国でもトップクラスの高島市。とくに農薬や化学肥料の使用を止めたり抑えたりした田んぼの生物相の豊かさは際立っている。この生物多様性を育む環境保全型農業によって生まれたお米の販売が始まっていることは、以前、“田んぼのモー娘米。”としてご紹介したとおり。
「たかしま生きもの田んぼ。」では、人には気づきにくい環境の変化にも影響を受ける水田周辺の生きものたちを対象に、その生息状況を把握する「生きもの調査」が一貫として行われている。環境保全型農業の効果を指標生物の存在によって立証するとともに、より豊かな生物相を育んでいくための方策を考える上でも役立つのだ。
たとえば、安曇川地区の梅村元成さんの無農薬・無化学肥料の田んぼの脇の水路では、滋賀県でも希少な存在となりつつあるメダカが去年の生きもの調査で見つかった。しかしメダカは本来、田んぼの中の高い水温や豊富な餌(ミジンコなど)を利用して繁殖する魚だ。そこで梅村さんはメダカも上れる魚道を田んぼに設置したのだ。もちろん、フナが田んぼでの産卵に利用することも期待していた。
ビーパル本誌(今年7月号)の「月刊雑魚釣りニュース」でもこの魚道について簡単に紹介したけれど、その後、この魚道は水路で生まれて間もないフナやナマズの稚魚が遡って田んぼに入りこんでいるという予想外の結果が確認された。魚道の出口に仕掛けた調査用の四手網に、全長2センチにも満たないような小ブナが、多い日は100匹以上も確認されたのである。梅村さんは笑顔でこう語る。
「畦に座って眺めていると、小ブナやら子ナマズやらドジョウやらが魚道の堰板をチョロリン、チョロリン、と音を立てて越えていくんです。その音を聞いているだけで楽しくなってきますね」
「たかしま生きもの田んぼ。」プロジェクトに参加する有志の農家がお互いの田んぼの生物相を確認しあう合同調査が行われた日、梅村さんは田んぼの水位を少し下げるために水を抜いてみた。すると排水口に構えたタモ網に6〜7センチに育った小ブナがあとからあとから落ちてくるではないか。
「また捕れた。ほい、また捕れた。いやいや、なんぼでも捕れるわ」
魚道の設計と設置でお手伝いをした私もこれにはびっくり。魚道をのぼったフナの稚魚の数から予想していた量をはるかに上まわる数の小ブナたちが次々に水路に落ちてくる。どうやら夜中に調査用の四手網の枠を飛び越えていった親ブナが相当いて、それが産卵をした結果らしい。
一方、水田魚道の取り組みでは先輩格となる「魚のゆりかご水田」を実施している新旭地区の石津文雄さんの田んぼでも、今年は去年以上に多くのナマズやフナの遡上が見られた。去年は田んぼと水路の落差を解消するための堰板が一枚だけだったため、堰板で生じる落差が40センチほどもあり、ナマズやフナが大ジャンプしなければ乗り越えらない状況だった。今年は堰板の数を増やしたため、落差が緩和されてうんと遡りやすくなったのだ。
しかし、困ったことがおきた。田植えをしてまもなく、水田雑草の中でも最も手ごわいコナギが大発生してしまったのだ。こうなると稲が吸収するはずの養分がコナギに奪われ、収穫量が減ってしまう。除草剤を使わない対抗手段としては、田んぼの水を抜いて稲の根株を空気にさらし、苗に勢いを与えてやるのが有効な方法だ。
「でも、せっかく産まれたフナやナマズの子がまだ小さいからなぁ。もう少し大きくなるまで水を落とすのは我慢するわ」
と石津さん。生業の収穫量よりも田んぼの魚たちへの配慮を優先してしまっているのだ。しかし、今年のこの田んぼの米は間違いなく美味しくなるはずだ。コナギに栄養分(とくに窒素分)を奪われた田んぼは収穫量こそ落ちるけど、米の味は土中の窒素分と反比例して良くなることが知られている。石津さんはコナギに襲われた田んぼのお米を「こなぎ米」と名づけて売りだし中だ。転んでもタダでは起きない不屈の根性の持ち主なのである。
農家の試行錯誤の挑戦を、様々な生きものたちが評価する「たかしま生きもの田んぼ。」プロジェクト。今年の米づくりレポートを通じ、これからも高島の農家の皆さんの奮闘と心意気をご紹介していきます!
(ライター/多田 実)
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<たかしま生きもの田んぼ。 お問い合わせ>
高島市 産業循環政策部 農業振興課(直通)/TEL:0740−25−8511
アミタ持続可能経済研究所/TEL:075−255−4526
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