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南極・昭和基地からの手紙・7
南極で『火事』がおきたら、どうなるの?


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 南極で最も怖いのは?
 「それは火事」と初代南極越冬隊長、西堀栄三郎さんは答えました。50年前も今もその答えは変わりません。ちなみに、南極では入道雲ができないので雷は無いし、地震の心配もありません。

 南極ではほぼ一年を通じて気温は氷点下です。昭和基地のある東オングル島は海に囲まれていますが、海水は厚い氷の下。雪や氷はふんだんにあるけれど、消火活動に使える水を確保するのは容易ではありません。屋外ではホースが凍結して使用不能になる恐れもあります。
 暖房器具や火器を使用する機会が多いことに加えて、南極は非常に乾燥しており、静電気が多発するため、漏電により思わぬ所から火が出る危険もあります。

 われわれ観測隊員は、日本国内で2度の消火訓練を受けてきましたが、南極にやってきてからも、毎月、消火訓練を行っています。基地中至る所に消火器が配備され、火災発生の報があれば、全員が手近な消火器をもって現場に急行します。とはいえ、うっかり軽装で飛び出すと、すぐ凍傷や低体温症になりかねないので要注意。極夜の間はヘッドランプも必携です。
 訓練では防火服、ポンプ、ホース、放水インパルス銃を持ち出して物々しくやっています。消火班、救護班の他に、破壊班を編成し、消火が追いつかない場合、重機を使って建物を壊して延焼を防ぐ、という手段も想定しています。しかしながら、実際には消火器による初期消火に失敗すれば、放水による消火はまず無理。自然鎮火を待つしか手は無さそうに思われます。

 ロシアのボストーク基地は−89℃の世界最低気温を記録している所ですが、かつて真冬の6月に大規模火災が発生し、20名の隊員は11月に飛行機が来るまで手作りの石油ストーブのみで耐えたそうです。
 厳冬期の南極へは現在でも、飛行機も船も救援には来られません。火事を出さない細心の注意とともに、最悪、火事により建物、設備、食糧等を焼失した場合の対策、そして有事の際には何としても生き延びるという覚悟と工夫が必要とされます。

 火事の次に心配なのは、雪上車がクレバスやタイドクラック等の氷の割れ目に落ちたり、転倒したりする事故です。こうした野外での事故を想定して、ザイルを使ったレスキュー訓練や救急搬送、救急法の訓練も行っています。

(南極観測隊員/志賀 尚子、一部写真提供/梅津 正道隊員)



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