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南極・昭和基地からの手紙・9 海氷上ルート工作
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昭和基地から100km以内の南極大陸沿岸には、日本の主な研究観測拠点が3ヶ所あります。10月上旬、そのうちの一つ、スカーレン(ノルウェー語で『頭蓋骨丘』という意味)へのルート工作および地学観測に同行してきました。
昭和基地のある東オングル島から目的地まで、ずっと凍った海の上を雪上車で旅行します。途中には、氷山や氷の亀裂など危険な箇所もあります。目標物が少ない白一面の南極で、悪天候時にも道に迷わないようにするためには、『ルート工作』という作業をします。安全と思われるルートを選び、一定間隔で目印を設置し、地図上に位置を記録していくものです。最近は非常に拡大率の高い衛星画像を入手できるので、予め氷山の位置などおおよその地形を知ることができて、ルート選定にもよく活用されています。
今回は、3台の雪上車に9名が分乗して出かけました。まず、先頭車のリーダーがポイントを決め、氷にドリルで穴を開け、氷の厚さを計って重い雪上車が通っても大丈夫かどうか確認します。つづいて2台目車両の隊員が、旗竿に番号を示すテープを巻いて赤旗を立てます。最後に、3台目がGPSで緯度経度を、ハンドベアリングコンパスで前後の旗の方位を測定します。
分業制で500m進むのに所要5,6分。前回のルート工作終了地点から、尺取り虫のように「進んでは止まり」を繰り返し、2日がかりで約30kmルートを延ばしてスカーレンに到着しました。目的地の数km手前には幅広い氷の亀裂があり、雪上車や牽引しているソリがはまり込んでしまう恐れがあったため、一旦全車停止。持参した2枚の頑丈な長い板を敷いて、1台ずつ慎重にその上を通過しました。
ルート工作は正味2日間、目的のGPS観測や地震計、アンテナなど機器の保守点検は各々数時間から1〜2日で完了しました。しかし、ブリザード襲来により3日間途中の小屋での停滞を余儀なくされたため、全行程としては、当初4泊の予定が6泊7日となってしまいました。停滞中は、10畳程の小屋に9人が鮨詰め。基本食の米は予定日程分の3倍量を携行していましたが、停滞が長引くにつれて次第におかずが貧弱になっていき……。また、吹雪が弱まった隙をついて、飲料水を確保するため外に雪を取りに出なければなりませんでした。
日々の行動予定を決める最大の鍵は、昭和基地の気象棟から送ってもらう天気予報でした。南極で野外活動をする場合、気象情報と、またその情報を伝えてもらい、緊急事態発生時には野外からSOS発信するための無線通信が必要不可欠です。今回はじめて野外でブリザードを体験し、気象と通信の重要性を改めて痛感。昭和基地の気象隊員、通信隊員が夜昼無く旅行隊をサポートしてくれたのは心強い限りでした。
停滞日とは対照的に好天だった移動日には、遠方に氷山の蜃気楼を眺めたり、『ハムナ氷瀑』という氷の滝に立ち寄ったり、小屋の近くを散策したりしました。氷山の間を縫うようにしてルート工作を進めていた時には、氷山の近くでひなたぼっこする3頭のあざらしの親子(?)に遭遇。南極らしさを満喫しました。
(南極観測隊員/志賀 尚子)
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