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“スキーで歩いて南極点へ”ツアー顛末記7
大雪のなかを歩き続ける
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出発して12日目から雪が降り始め、毎日絶えず降り続く。南極大陸の広大な地域を覆う巨大な雲による降雪。深い穴ぼこに迷い込んだような……。私たち3人以外何も見えない状態が一日中続きました。
ホワイトアウトという霧の中にいるような状態にはまると、面白い現象が一つ、みんなに共通してありました。重い橇をしっかり引こうとしてかなり前のめりになるため、斜度の感覚が狂い始めるのです。歩いているのは平地なのに、ものすごい斜面を登っているような感覚になる。周囲は真っ白で平衡の基準となるものが何一つないため、ついに脳が勝手にバランスを取ろうとし始めるのでしょうか……。いずれにせよ、全員が今日はものすごい登りだった、と感じているにもかかわらず、GPSは前日との高度差20m程度を示すだけ。
これはいったんハマると矯正のしようがなく、立ち止まって自分がいるのが平地だと狂った感覚に教え込むのに少しかかりました。私は橇の重さの変化を感じて、できるだけ奇妙な感覚に惑わされないように気をつけました。
大雪の中ではとにかくルーティンに専念しました。出発当初は身体を慣らす目的で50分歩いて10分休憩を六回繰り返すものでした。その後一回の行動時間を70〜80分程度に延ばし、休憩を10〜15分。それでも一日の歩行は6時間程度でした。
12月10日、1セッションを90分、プラス休憩15分に延ばしました。これは出発前に計画していたことです。ひとつのセッションが長いほうが歩行に集中できて距離も出せる。私はグリーンランドの経験から、プンタアレナスのミーティングで提案していました。しかし雪でなかなか距離が伸びない。ガイドのジョンは焦り始めていました。
ここで私たちの日課をご紹介しましょう。
朝7:00頃起床、朝食と1日の行動分の水を作り、テントをたたんで荷造りなどの準備済ませて歩き始めるのが9時前後です。
90分歩いて15分休む、を4回繰り返し、最後に1時間歩いて、計8時間の行動。だいたい5時ころストップしその付近にテントを張る。
キャンプサイトを整えたり、荷物を運びいれたり、雪を払ってテントの中で落ち着くまでに1時間程度、ほっとしたら水作りと夕食の支度。大テントにいる人が担当します。だいたい午後7時ころ夕食のコール。1時間ほどかけて食べたり喋ったりします。電話をかけたりデータ通信をしたりていると9時をだいぶん回ってから寝る支度に入り、ここで私は顔を洗って、日記をつける。やっと寝袋に入っても白夜のため眠りは浅く、何度か目覚めて、たいてい朝は6時前には起きていました。血圧と脈を測ってノートをつけたりその日の準備をしたり。そしてまた9時から5時までの一日が始まる。
サラリーマンとかわらないですね。
ただ南極では満員電車の通勤がなく、日本の会社員は、少なくとも橇は引かなくていい。しかし100kg近くの荷物乗せた橇引いて山手線や環状線に乗ろうとしたら、大変なことになるでしょうね。乗車拒否とかあるのでしょうか。丸の内でスーツ着た人が橇引いてたらびっくりされるだろうなぁ。ついでにペンギンやアザラシやら白クマのコスチューム入れたら、完璧な極地。自衛隊とか出動してバリケード築いたりして。
南極の妄想でした。
でもこんなことでも考えていないと、もう乗り越えられない無白の世界だった……。日本が恋しくなっていたのかもしれません。
いずれにせよ雪は無情に降り注ぎ、これは7日7晩つづいたのです。
(登山家・ライター/續 素美代)
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