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“スキーで歩いて南極点へ”ツアー顛末記8
やっと雪が止んで、しかし……
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南極大陸の半分近くという広大な地域を覆う巨大な雲が7日7晩にわたって雪を降らせ続けました。このレポートも雪の話で停滞してなかなか先に進まない以上に、私たちの橇も遅々として前に進まなくなっていました。
12月13日、出発して16日目、大雪が降り始めて5日目の朝、もう誰も何も言わない。黙って準備をして歩く。トップを行くジョンがまだ眠いのか、昨日までの疲れか、かなりつらそうです。なかなかスピードが上がらなくなっているので、ふと考えてストップをかけました。
日本の冬山では胸まで埋まるような深雪をラッセルして登るとき、リードはほとんど荷物を背負いません。セカンド、サードと荷物を重くしていき、前に行く人たちが作ったトレイルを歩けるラストが、一番重い荷をもつ。と提案したら、彼は燃料以外のあらゆるものを放出してきました。
ラストの私の橇には機材類がのっかり、いちばん重くなりました。橇の前部を踏ん張って持ち上げようとするとやっと雪面から離れる程度。ギシッときしむ音をたてる……。うわぁ、これで歩けるかな……。頭の中で概算してみると90kgは超えている。FRP素材の丈夫な橇だけど大丈夫かいな……。でもこれで少しは距離の伸長につながるかも。
良くトレーニングされた、素質のある犬は、自分の体重の2倍を引けるといいます。犬ぞりの話ですね。私はとりあえず人間、しかもろくにトレーニングしていない。ちなみに他の2人は27歳と31歳の男性で、体重はジョンが80kg、キャメロン 83kgと、60kgにも満たない私より20kgも上回る。雪面に対するグリップ力が格段に違ってきます。
そりが進まないように、時間も進まなくなりました。1セッション90分が長くながーく感じられる。いつもは時計を見なくても大体の時間がわかるものです。それから時間を意識しないほうが時のたつのは早いもの。歩くことや自分の考えや妄想に没頭していると、あっという間にセッションが終わったりしていました。しかしこうなるとつらかったですね。
自然の中では自然の音を、という主義の私も今回ばかりは音楽を用意してきていました。友達からプレゼントしてもらったSonyのWalkmanにはCDが50枚分ほど入っていました。時間がなくて、出発3日前にまた別の友達にあわてて頼んでやってもらった割にはなかなかの充実度。いつも音楽が流れているという環境に慣れていない私にも、これはいい気分転換でしたね。しかし何と! 他の物理的な障害が発生。天気が悪くて充電ができない。
日本から持ってきた太陽電池システムは直射日光に当てなくても、テントのフライシートと内張りの間でも発電できるくらい質の高いものでしたが、さすがの大雪には太刀打ちできない。毎日使う衛星携帯電話のバッテリーさえ心もとなくなってきていました。音楽どころのハナシじゃない。
ということで気分転換は、ありとあらゆることに悪態をつくか、日本のことを考えるか、妄想にふけるか……。現実ともに長い白いトンネルに迷い込んだような日々。
けれど希望は捨てていませんでした。止まない雨はない、ように降りやまない雪はないはず。どんなにぶ厚い雲の上にも、太陽が輝いている。いつか必ずこの雪も止んで、明るい陽が射すはず。信じて歩くしかありませんでしたね。
そしてついに大雪8日目の朝、起きて外を見ると雪が降っていなかったのです。しかし地上には大量の雪……。これから私たちの本格的な闘いが始まるのでした。
(登山家・ライター/續 素美代)
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