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“スキーで歩いて南極点へ”ツアー顛末記9
終わりの始まりは、新たなる始まりへ


●いくつになっても心が自由でいたいおとなたちの、趣味や道楽の入り口「おとなのたまり場ボンビバン」は、毎週木曜日更新。
 南緯80度から19日目、大雪8日目の朝、雪が止んでいました。やっと!!! 涙が出る思いでした。他の二人も同じようで、ジョンが隣のテントに「おーい、キャメロン、もう降っていないぞ」とうれしそうに呼びかけます。
 おもたーい雲が垂れこめていますが、雲の切れ間からほんのり空が見える。キャメロンは「これが終わりの始まりだといいなぁ」と返してきました。
 終わりの始まり。面白い表現にジョンは嬉しそう。
 しかし何が終わるのか、そして何かが終われば、次に来るものは……。恐ろしい戦慄が全身を駆け抜けました。震撼です。昨日までの降雪とホワイトアウトのあとには、青空と、大量の雪。ほかに何が待っているというのでしょうか。しかしこれを口にするわけにはいかない。

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 重く深い雪は昨日よりも大変に感じる。どんよりと重く魚のうろこみたいだった空は、だんだんと明るくなっていき、ついに太陽が顔を見せるに至った。見えるということはすばらしいことだ。今日は地平線まで見渡せる。7日7晩のトンネルを抜けてまるでどこか違う世界に来たような気分。(略) 陽ざしがみんなを元気づけているのは事実だ。ものが乾く、バッテリの心配もなくなる。湿った、凍りついたクツでうろうろするのはもうこれまで。(12/16の日記より)
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 この午後遅く、青く晴れわたった空に、久しぶりにツインオッターを見ました。雪に深く刻まれた私たちのトレイルは上空からも明らかだったのか、飛行機雲を従えてぴったり真上を飛んできていました。そして一回ループを描いて、私たちの上空を飛び去りました。挨拶してくれたのです。みんな応援しているよ。そんなメッセージを感じました。

 事態は、しかし厳しくなるばかりです。この日の進捗は11.57km。

12/09  19.81km
12/10  17.34km
12/11  18.35km
12/12  18.24km
12/13  15.39km
12/14  14.93km

 そして12/15は10.90km。7日で116km。最初の補給83度まであと80km近く。こんな調子では5-6日かかるでしょう。しかし残っている食糧は……夕食はたった2回分。大ピンチ。消費エネルギーはますます増えるのに、食べるものは減っていく。この2回分の食料を、少なくとも4日は持たせるために、分割・節約食が始まりました。
 ただ朝食はなぜか6回分、幸いにもランチは2回+12回。83度の補給で入るはずだったランチをキャメロンがパトリオットヒルズで分類してALEに渡し忘れていたため、余分な荷物としてそりに乗っていたものが、一転救世主となりました。
 しかしこれを無制限に食べれば、83度からの食料に支障をきたします。

 飢えはさらなる飢餓を誘い、食糧不足はメンタル面の切迫へとつながります。ガイドのジョンには大雪の日々からこの気配がうかがえましたが、ついに表面化、太陽に元気づけられたのか、この日の行動にあと1時間プラスしたいと言い出しました。
 重い雪で橇は進まず、みんなもうくたくたに疲れ切っている。早く83度の補給に着きたい気持ちはわかるけれど、ここで無理をして消耗に及んでしまったら、食糧を拾ってももうその先へ進める体であるかどうか。ALEの気象予報ではあの雲は85度までを覆っていたという。つまり深く重い雪はあと……。今焦って消耗したら……。毎日歩き続けなくてはいけない遠征では、いったん消耗した体がリカバリーする余裕はない。
 私たちの目標は南極点であって、補給ポイントではない。しかし急がないと食べるものがなくなってしまう。

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 終わりの始まりは、次の始まりの始まりへとつづいていく。もしかして……という戦慄が走る。これが序曲だったとしたら、次は、どんなそして何楽章つづくというのだろう。まだ補給に、1つとして届いていない。(同)
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(登山家・ライター/續 素美代)



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