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“スキーで歩いて南極点へ”ツアー顛末記21
ついに見えた南極点


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day52 1月20日 南緯89°28" 36'" 2774m → 1月22日89°47" 46"' 2797m 移動距離35,53km 晴れ
無風の朝が昨日今日と続いている。恐ろしいほど静かで穏やか

ごそごそする感じで目が覚める。(略)
みんなあまり話さない。疲れているのか元気なのかわからない
でもみんなわかっている 何も言わなくても もうすぐだということを
私たちはやがて、やがてすぐに やってのけるということを
キャメロンの足はひどい。ジョンは下痢を4日ばかり続けている
そして私は、限界を超えている
涙が出たくても、もう出ない。
こみあげてくるのは 感情
これは何なのだろう
とにかく出発の準備だ、また長い一日がはじまる。
(1/20日記より)
***


 ここ1〜2日、ゴーグルが曇るようになってきた。前が見えなくて困るけれど、いちいち立ち止まって霜取りしていても時間がかかるし、拭いてもまたすぐに元の木阿弥。結露の隙間から足元だけ確認しながら進む。と、顔を上げて前を見ようとしたとき、地平線に何か見えるのを感じた。あれっ? と思って思わず立ち止まるほど、何か不思議な感じ、いや、強い衝撃を受けた。
 もしかしたら、もしかしたらあれは!!!

 極点基地でした。アメリカの巨大な気象基地があると聞いていましたから予想通り。しかし何かが、いえ目標物が見えることはとてつもない感激で全身を揺さぶりました。56日間にわたって、ついさっきまで、360度まったく同じ。何一つ目標物ののない真っ白な水平線を見つめて歩いてきたのです。自分たちが進んでいく方向が正しいのかさえ、確信が持てない時だってありました。ホワイトアウトの中では、振り返って見るとうねうねと蛇行するトレイルに徒労感いっぱいになったり……。ただこの方向が間違っていないことを信じてひたすら歩き続けるだけ。

 しかしついに見えたのです。私たちの目標、私たちの夢、私たちのゴール。すべての努力があそこで実を結ぶ。無駄ではなかった、間違っていなかった、信じ続けたことがやっと今結果となって私たちを待っている。感激で心打ち震えるとはこんなことかと思いました。もちろん涙だらけです。

 その夜みんな静かでしたが、興奮となんともいえない嬉しそうな感じは肌で感じます。感じることでこんなに嬉しいことも少ないでしょう。
 夕食が終わった時に、私は一つ提案しました。
 今日まで一生懸命歩いてきて、明日でこの旅も終わる。ついに南極点に着くけれどこれは誰か一人の功績ではなく、全員が力を合わせて頑張って、助けあってきたからこそここまで来たと信じている。だから極点に着くときは、誰かが先になったり後になったりするのではなく、そりを置いて、スキーを脱いで、全員で肩を組んで、一緒に極点を踏みしめたい。
 ふたりとも大賛成でした、ホッとすると同時に、ついに明日だという興奮が湧き上がり、なかなか寝付けず朝を迎えました。

 2008年1月23日快晴、-32.2℃、しかし無風という条件に恵まれて、ほぼ1日の距離、最後のスタートを切りました。テントをたたむときも歩き始めてからも涙がこぼれて止まらない。ああ、これで終われるんだ、ほんとうにあそこに着いたら終わるんだ、53サイクル、56日間にわたった苦労がいちにち分ずつ、一歩分ずつ頭に浮かんでは消えていきます。

 しかし最後にひとつクリアしないといけないことがありました、それは基地の手前、私たちの行く手を遮るように7kmにわたって張られている高圧電線。何でこんなもの作らなきゃいけないんだ、アメリカ! これを迂回しないと極点へは行けません。ちょうど中間地点付近に立ち電線を見上げて、私たちはしばし呆然。
 でもALEとの定時交信で、一定時間しか電流は流れていず、下をくぐって進んでも問題ないことがわかりました。早く聞いておいてほしかったよ、ジョン。いずれにせよあとは極点まで2kmほど。もうすぐです。

(登山家・ライター/續 素美代)



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