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アイヌの魂を、古布で描く作家
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カッと目を見開いた“神の鳥”シマフクロウ、輝きを放つ大地と生き物たち……。アイヌの人々の自然に対する態度、文化を、「古布絵」という一風変わった方法で力強く描写し、刺繍で語る作家がいる。
カンバスは松阪木綿。絵の具の代わりに古布を使い、アイヌの伝統的な刺繍を施して絵本やタペストリーを作っている宇梶静江さんである。彼女は、昭和47年朝日新聞の投書欄に「ウタリよ手をつなごう」と呼びかけ、以来アイヌ復権にその半生を捧げてきた。
「長期にわたり、縄文の文化形象を残し、世襲制をとらず、侵略のための人が人を殺す道具を作らず、敵を殺めることでお家復興をとらず、殺戮を戒め、伝統を重んじ、伝承を意図してきた私たちの祖先たち。森羅万象を神と称え、どんなものにも、個々の存在にそれぞれの価値を見いだす……。」(同成社『アイヌの治造物語』古布絵と文:宇梶静江から)
アイヌの人々は古来、固有の文字を持たなかったと聞く。しかし様々な方法で、彼らはその魂と文化を、今日まで伝承し続けてきた。そして宇梶静江さんはさらに、古布と刺繍という彼女独自の表現方法を発見し、発信し始めた。時間をかけて収集した様々な古布と、アイヌ模様の刺繍を使い、平和な世界のあり方を「形」で伝え、残そうとしている。用いる“和文”は最小限、絵解きで表しているのは“美しい地球のあり方”である。
古布絵本のひとつ『アイヌの治造物語』は、アイヌのエカシ(長老)治造爺(はるぞうじい)が夢を見た物語。夢の中で、土地の精霊であるたくましい若者と、水の精霊である美しい女の訪問をうける。訪問者は、汚れてしまった野山、川や海を、けものや魚たちが自由に過ごせる自然に戻そう、と訴えかける。
ちなみに『アイヌの治造物語』のモデルになった「治造」さんは宇梶静江さんの弟の浦川治造さん。現在千葉県君津市に「カムイミンタラ(アイヌ語で「神々の遊ぶ庭」という意味)」という自然との共生を体現する場を創っている。ここがアイヌの同胞や地域の人々をはじめとする、すべての人々のための集いと憩いの場になることをめざしているという。
ところで、絵本の中の夢の訪問者の問いかけに応えるように、現実の世界を生きているエカシ治造爺の暮らしは、ネットマガジンSooKの『ダーウィンのひ孫』という雑誌で連載中だそうだ。私もこれから読んでみようと思う。
(飛び出せ農耕民族/yoshiko iguchi)
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