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生き物好きをうならせる木版画展、原宿で開催中
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私が生き物好きの人と話していて一番興味が湧くのが、フィールドで瞬時に種を言い当てるため、その生物のどこを見ているかという話。図鑑の写真なら全体が見回せるが、現場ではそうはいかない。相手は草木の陰、あるいは石や珊瑚の陰に見え隠れする。特徴的な模様や動きで判断しているわけだ。いずれにしても、これが正確にできるのは特殊能力だ……。常々、私はそう思っている。
自分も淡水魚を追っかけて日本全国を歩いたので、普通の人よりは見分けには自信がある。「この種はどうやって見分けるの?」と聞かれれば、「顔が違うでしょ」なんていう意味不明な解説も日常茶飯事。実は“瞬時”にというところがミソで、経験という頭のデータベースをフル動員して、その種を決定づける1点に集中して見ているからこそできる技だったりする。
この生き物を見る眼の鋭さというのは,何も話だけではなく、作品からも感じ取ることができるものだ。私も生物に関する写真展、絵画展などが好きで鑑賞に行くのだが、そんな自分が1996年、何気なく立ち寄った展覧会で大きな感動をうけた作品がある。それは『大礁円環』と名づけられた12畳大の版画だった。作家は沖縄・伊是名島出身の名嘉睦稔(なか・ぼくねん)さん。沖縄サミットの記念切手にその版画が使われたのでご存知の方も多いことだろう。今、『命の森』と題し、7年ぶりに東京で展覧会が開催されている。
とにかく、この作家の作品の特徴は自然をダイナミックな構図でとらえ、大胆な彫りで表現する。その迫力は作品の前に立てば誰もが感じることができると思う。それでありながら、作品に近づいてみると驚くほど繊細な描写で、版画とは思えないほど、その生物の特徴を余すところなく伝えている。
私の好きな『大礁円環』という作品には沖縄の海で見られる多くの魚が登場するが、そのひとつにハナヒゲウツボがいる。幼魚と成魚で色が変化することで知られる魚だが、幼魚は黒色である。実は背中に1本の黄色い細い線があるのだが、驚くことにそれも見逃されてはいない。12畳という大きさからすれば、表現しなくても問題ないような点もきちんと表現されている。このこだわりに生物屋としての最大限の魅力を感じるのだ。黒い部分は版木で表現され、色は紙の裏から塗られている。他の魚たちも先に述べた、その種を決定づける1点が彫り込まれているので、種がいい当てられるのだ。
もうひとつの特徴は睦稔さんの絵の中では魚の生態に嘘がない。岩陰に潜むものは岩陰に、サンゴと砂地の境目にペアでいるものはその通りに絵の中に存在している。特にダイバーの方にはそのすごさが伝わるはずだ。これらはすべて睦稔さんの観察眼の鋭さに裏打ちされているものだ。だから、多くの作品を見ているうちに、私は版画家としての睦稔さんはもちろん、生物屋としての睦稔さんにより大きな魅力を感じるようになった。
では、見たままの風景かといえば、それは違う。版画という表現方法が、写真では背景に溶け込み、見過ごされてしまいそうな小さな生き物も強調し、いつしかきらきら輝いて、絵の中を泳ぎまわっている様に見えてくるのだ。そして、その絵の中では満ち干が繰り返され、潮が流れ、時が流れている。絵を見ていたはずが,自分が海の底に佇んで水面を見上げているような気さえしてくる。だからこそ、睦稔さんの絵は自然で美しい。
そして、この展覧会のもうひとつの魅力はバックに流れる素敵なサウンド。先進的なヒーリングミュージックを奏でるTINGARAの手によるものだ。正直に書くと、私はこのTINGARAの大ファンである。公共広告機構のCMで流れた『WATARIDORI』を知る方も多いはずだ。今回もこの展覧会のために新作の組曲が用意されている。素敵なサウンドに包まれて鑑賞する「陸の森」「海の森」。自然が大好きな人にしか見えてこない“何か”がある睦稔作品。この夏、ぜひあなたの目で確かめに行ってほしい。
追伸:8月24日15:00〜会場内の『大礁円環』の前で、私がその作品への想いを語るトークショーを行ないます。興味のある方はぜひ、会場にお越しください。
(「月刊雑魚釣りニュース」雑魚紳士録担当・雑魚党特別顧問/渡辺 昌和)
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◇◆DATA◇◆
『名嘉睦稔木版画展 〜命の森〜』
会期:第一部 / 陸の森 7月12日(土)〜8月17日(日)
第二部 / 海の森 8月23日(土)〜9月28日(日)
時間:9時〜17時30分 (入館は閉館の30分前まで)
会場:明治神宮文化館 宝物展示室
入場料:一般800円、団体(20名以上)大学生高校生500円・中学生以下無料
交通:JR山手線・原宿駅、東京メトロ副都心線、千代田線・明治神宮前駅下車
名嘉睦稔公式サイト:http://www.bokunen.com/
TINGARA公式サイト:http://www.tingara.com/
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