第1話 ピンクのサンゴ

 パイロットはマイカメラを持ち込み、コクピットの脇に置いてナデナデ(よせばいいのに…)。プロペラがフル回転し、快晴のなか飛行機がテイクオフ。体と心も浮き立った。
まずは島を旋回し、ポンペイの名所ケプロイの滝へ。
 飛行機は滝めがけて急降下。「ワォッ、ジェットコースターみたい」
 パイロットは私を振り向きニヤッと笑う。自分の腕の確かさをアピールしたいみたいだ。 このとき、ある思いがフッとよぎった。
「落ちない…よね」
 飛行機に乗ると、必ず一度はよぎる感情のグレーゾーン…。でも、それはいつもと同じように、よぎって去っていった。

 さあ、いよいよ、ふたつの環礁へ。ポンペイ本島からダイビングボートで1時間以上かかるところを、飛行機だとひとっ飛び。高い空から見下ろした環礁の外側は、うち寄せる波で白く縁取られ、内側は鏡のように静かな水面だ。そんな光景を空から見下ろしながら、2日前にその場所をボートで訪れたときのことを思い出していた。

 エントリーした環礁のリーフエッジは透明度抜群! さまざまな回遊魚が群をなしていた。水温も30度と高いので、なんだか海中にいる感覚がしない。空中をスイスイと飛んでいるような感覚をおぼえた。こうじゃなくっちゃ! すごい海だ!
 環礁の内側にボートを入れると、静寂につつまれた白い砂浜と水色の海の風景が広がった。環礁の外側と内側は動と静。浅瀬をスノーケリングすると、水深30cmほどのところに、いくつもの小さなエダサンゴが息づいていた。そのなかに、これまで見たこともないピンクのエダサンゴをみつけたのだ。
 あれは、サンゴの赤ちゃん……。それにしても、夢みたいな場所だったなあ。あの場所こそ、楽園というのかもしれない……。

「ほら、急いで!」
 夫からカメラが突きつけられてハッと我に返る。私の役目はフィルム交換だ。耳をつんざくプロペラ音のなか、セッセと作業をする。
 ほどなく撮影終了。飛行機は帰途についた。

「咲き乱れるサンゴのお花畑…空中遊泳をしているかの透明度…アンツ、パキンのウワサは本物だった!」
 特集記事の巻頭に入れるコピーを考えていたとき、突然、右側のプロペラが止まった。思わず後ろを振り向いた私に、「空港が近いから、片方のエンジンを切ったのかな。よくあることですよ、ははは」とマネージャー。
「あっ、そうなんですか。省エネってわけですね、あはは」なんて応えていると、今度は左側のプロペラも停止。静寂につつまる機内。窓の外は、どこまでも青い空…。
 なに? これって、いったい…。