第2話 飛行機は落ちる

 今でこそ、ダイビングは楽しさを優先するレジャーだが、私が習っていたころは、けっこうハードなトレーニングがお約束であった。
  上級コースでは、平泳ぎの潜泳で25メートルを息継ぎなしで泳ぎ切ることがキホン。また、マスク、フィン、スノーケルで水深10メートルまで潜って、そこで器財をすべて取って浮上。水面で少し呼吸を整えて、今度は素潜りで10メートル潜って、器財を装着して浮上する、なんてこともやってのけた。しかし、こんなことがどんな役にたつの?なんて思ってもいた。
  いや、大いに役にたった! パニックを起こすことなく脱出できたのは、あのときの練習のたまものである。

 海面に浮き上がると、あっちこっちから頭が出た。
「おーい、だいじょぶかあ?」「そっちはー?」
  立ち泳ぎをしながら、お互いを確認しあう。全員生きているようだ。
  墜落した飛行機は屋根の部分だけ残してプカプカ浮いていた。とりあえず、みんなで飛行機の背中によじ登った。
「アタタタ」「イタタ」
  それぞれにどこかしらダメージを受けたようだ。私も首に激痛が走る。あまりの痛みにウエッと吐きそうになったが、何も出てこなかい。クックック。首を押さえながらも、なぜか笑いがこみあげてくる。みんなも声をあげて笑いだした。
  アハハ。へへへ。フフフ。……パイロット以外。
  ムフムフと笑う夫の胸にさがったニコンの一眼レフが、海水でショートしたのか、バチバチバチと自動シャッターを切りまくっていた。