第5話

生き物は危機に瀕すると子孫を残す

文 /こばやしまさこ
写真/小林安雅

 



   数日後、夫が帰国した。  ダイビング雑誌の〆切が迫り、急いで写真をピックアップして原稿を書く。  海にかかるダブルレインボウ(二重の虹)、海辺のリゾート、子どもたちの笑顔……。ライトボックスのポジフィルムから、南の空気がたちのぼってくる。作業する窓の外はひたひたと冬の気配がせまり、思わずブルッとする。




 平行して、保険の繁雑な手続きに追われてもいた。加入していた損保会社の人はのっけから飛行機が落ちたということを信じてくれなかったし、その後の対応も冷たいものだった。撮影機材を特約に入れていた損保会社に連絡を取ったのだが、取材旅行の際に別の損保会社でかけた旅行傷害保険が問題になった。生命保険と違い、損保は二重に支払われない。だから、ふたつの会社が補償額をきっちり二分割するとのこと。初耳である。別に二重取りする気はないけれど、加入時にそういう事実を教えてもらいたいものだ。無駄な保険をかけないためにも。
  おまけに、保険対象の器財すべてをよこせという。カメラマンの夫にとって、使えなくなったといえ長年愛用してきたカメラを手放すのはつらく、ウウ…ムウと唸っていた。この損保会社とは契約更新しなかった(トーゼンである)。