第12話 冬の海辺

 それからも、私はせっせと海のものを収集してきた。
  漂着物コレクションのお気に入りが、生き物の殻である。貝がら、ウニの殻、フジツボの殻、カニやエビの殻。
  ウニは死ぬとトゲがおちて、表面にプツプツした跡が残るおまんじゅうのような殻になる。ウニの仲間でもトゲがないタコノマクラやカシパン類の殻は、表面に星や花のもようがあってかわいい。ただし、この殻はもろくこわれやすい。苦心して無傷の殻をゲットしても、保管しているうちにひびが入ったりこわれてしまったりして、幾度となく悲しい思いをした。


  左上はブンブク類で最大のオニブンブク(直径12cm)。右上の淡いピンク色がヨツアナカシパン。中段左の小さな殻はオカメブンブクで、名前のとおりオカメのお面に似ている。ポツポツ模様はウニの殻。細長いものは殻ではなく、コウイカの甲。そのほかはすべてカニの甲羅。カニの甲羅もとてももろくて、撮影ライトを当てていたら、ピシッとひび割れてしまったことも。

 殻を持っているけれど、生きている姿を見たことがないものがある。
  ブンブクの仲間である。近い種類のカシパンは、よく砂場で見たことがあったけれど、ブンブクは砂に潜っていることが多く、気づきにくいのだ。

 後にとーちゃんが生きているブンブクの撮影に成功した。
  ヒラタブンブク。砂地に何かが潜ったような形跡を見つけて、砂を掘ってみたら出現! カシパンの仲間は砂地にポツンといて、ほとんど動くことがない。でも、ブンブクはものすごくアクティブだった。トゲをシャカシャカ動かして歩いて行く(ウニの仲間は管足を使って移動するので、これも意外)。そして、あっという間に砂に潜ってしまった。
  殻から受けるイメージがのほほんとして牧歌的なブンブクだけど、生きる姿はその真逆。
世間嫌いでエキセントリックなヤツだった。



 こんなふうに未知の発見がまだまだ隠されているから、海という劇場はおもしろい。
  最初に紹介したアンコウととーちゃんとの出会いも、その後なかなかやってこなかった。でも、今こうして写真がある。
 
  ムスメが一歳の冬に過ごした海辺で、私はダイビングとは別の海の魅力に気がついた。そして、愛すべき海の生き物たちとの新しい出会いを繰りかえしていくことになる。