第16話

泳ぐアメフラシ

文 /こばやしまさこ
写真/小林安雅



アメフラシは日本各地の磯で見られる。春から夏にかけて、海藻をたくさん食べてズンズン大きくなる。外国ではシースラッグ(海のナメクジ)と呼ばれている通り、海の巨大ナメクジといった感じだ。
実は、私はアメフラシをさわるのが大好きである(陸上のナメクジはさわれない…)。スノーケリングに水中でさわると、ベルベットのようになめらか。陸上でさわると、子どもが好きなスライムに似ている。
親がさわっているのを見て育った娘も、アメフラシを普通にさわる。
春の磯でアメフラシを手にしていた娘を見たカップルが、
「よく、さわれるね!」
と娘に声をかけたことがあった。
すかさず、アメフラシに頬ずりしてみせる娘…お調子モン気質は、私に似たようである。

夏の初めごろ、いつもの海辺に行くと、潮の引いた磯におびただしい数のアメフラシがいた。さらによく見ると、黄色い卵もあちこちに。アメフラシの卵はウミゾウメンとも呼ばれている。酢の物にでもしたらおいしそうだけど、食べると下痢をするらしい。

アメフラシは雌雄同体なので、交尾は一対一とは限らない。
3匹が連なっていたり、もっとたくさんのアメフラシが団子状態で交尾していたりする。
「酒池肉林だなあ…」
と思わずつぶやいたら、すかさず娘に突っ込まれた。
「シュチニクリンてなあに?」
アバババ…。
「ねえ、なあに」
パパに聞いてごらん。向こうでカメラを構えているとーちゃんを指さしたら、
「ねーえ、パパァ、シュチニクリンてなあにいいい?」
と走っていった。やれやれ…さて、なんと答えたのだろうか…。

アメフラシを水槽に連れてきて、海藻の食いっぷりを観察したことがある。
アメフラシはモシャモシャとひっきりなしに食べ続ける。それも、すごくおいしそうに。
見ている娘の口から、よだれがツーとたれた。