第18話 スノーケリング・ハイ!

例えば、ひとつのタイドプールを、海の生き物の町とおもしろい。
保育園のオヤビッチャ組・ギンユゴイ組・メジナ組、ニジギンポが暮らす空き缶ハウス、カエルウオの穴ぼこ団地、ドロメ銀座、ヤドカリ交差点…。

スノーケルをくわえた口でブツブツとつぶやきながら潮だまりにこもる姿は、はたから見たら不気味だと思う。

赤ん坊のうちからスノーケリングする母に浮き輪で引き回されていた娘、成長するにつれいやがるようになった。
海面にずっと顔をつっこんで、時々思い出したようにガバッと起きて、娘の頭にザバザバと海水をかけて(熱射病防止)、再びうつぶせ体勢の母親と一緒に行動したくないのは、当たり前といえば、当たり前だ。

そこで、娘にスノーケリングを教えることにした。
スポーツ量販店で買った子ども用の着脱が簡単なストラップタイプの足ひれとマスク・スノーケルに、腕につける浮き輪をさせた。ひと夏、それを使ったのだけど、泳ぎ方が今ひとつ。体が縦になってしまうし、足は自転車こぎでフィンがうまく水をつかんでいない。ううむ…。

次の夏、思い切ってダイビング用のブーツ型足ひれのSSサイズを買入。
それで試しに、伊豆海洋公園のプールで泳がせてみた。シャバシャバと数メートル足ひれで水をかいた娘、「わかった!」と一言。
「この腕輪いらない」と言うの外してやったら、
スイッと水を得た魚のように泳ぎだした。そして、あっという間に50メートル泳ぎ切ってしまった。
スゲー! (とーちゃんと私)
子どもだから子どもだましの器財じゃなくて、本物を与えたことが正解だった。
こうして、娘は4歳にしていっぱしのスノーケラーになった。

海洋公園をスイスイと泳ぐ小さなスノーケラーは、ダイバーの注目を浴びた。
親としてちょっと得意。
普段はポーカーフェイスのとーちゃんも、知り合いのダイバーから「コバヤシさん、娘さんすごいですね」なんて声をかけられて口角をクイッとあげる。
親ばかであった。

娘が5歳の春、家族でモルジブを訪れた。
娘は珊瑚礁の明るくてカラフルな海中に大興奮! 
ギンガメアジの群れと一緒に泳いだり、テングハギの角に驚いて一目散に逃げたり。スノーケリングで自由自在に泳ぎ回る娘を、とーちゃんはパチパチと撮影した。
それを見ながら、娘がスノーケラーになって親の行動範囲が広がったと、つくづく実感した私であった。