第20話

潮だまりコロポックル

文 /こばやしまさこ
写真/小林安雅




夏のあいだ、ほとんど伊豆の仕事場で過ごしていた。
そして、今日は伊豆海洋公園、明日はF漁港と、毎日お弁当持参で海へ繰り出して、
とーちゃんが潜っているあいだ、私とムスメはスノーケリングや磯遊びをして楽しんだ。
でも、写真絵本「海中記」が出てから、少し異変が起きた。
なんだか、見られているようなのである。
最初は気のせいかと思ったのだけど、やはり視線を感じる。
でも、そのことを口にしたら、とーちゃんから「そりゃ、自意識過剰だよ」と言われかねないので、黙っていた。
そんなある日、とーちゃんの方から口にした。
「潜りにくい……」
聞けば、やはり「見られている」。
それだけならまだしも、とーちゃんが海に入って泳ぎ出すと、あとをついてくるダイバーがいるという。
「困るんだよなあ…」
タンク交換のために、近くにちょっと置いたダイビング器財が無くなったこともあった。
ダイビング器財は安くないので、これも困った。

そんなこんなで、ダイビングスポットの海辺から少しずつ足が遠のいた。
でも、海には行きたい。そこで、目指した新天地が潮だまりだった。
磯で潮が引いたときに岩のくぼみに海水が取り残された場所を潮だまり(またはタイドプール)という。プールほど大きいもの、細長い亀裂のようなもの、雨上がりの水たまりのように浅くて小さいものと、さまざまなタイプがある。
東伊豆の海岸線をくまなくチェックして、いくつかの潮だまりへ通うようになった。

そのひとつが、城ヶ崎自然研究路にある、大淀・小淀と呼ばれる場所。
名前の通り、大小ふたつの天然の潮だまりがあり、大きい方は15メートルほどの広さだ。
森をしばらく歩いて断崖絶壁を降りていかなければならないロケーションなので、海水浴客はほとんどいない。やったー!
波がたたないので泉のように静かで、水中も透明度抜群。
メジナの幼魚が小さな群れをつくってスイスイ泳いでいる。
水面近くでギンユゴイがきらりと光る。