
第22話
おとなと子どもの海
文 /こばやしまさこ
写真/小林安雅
写真/小林安雅
ハワイ島に誘ってくれた編集者のヒロミさんは、児童書が得意だった。
あれこれと話すうち、海遊びがテーマの子ども向けの本で、「これ!と思うものってないよね」という見解で一致。そして、
「よおし、それなら私たちで海の写真絵本をつくっちゃおう!」ということに。
いわゆる海水浴じゃなくて、海という自然を楽しむ本。
海辺のいろいろな生き物たちと出会う本。
幸い(?)、登場人物の子どもがいる。ヒロミさんちのMikiちゃんとうちのムスメ。ふたりの小さいうちが勝負である。
これまで雑誌の仕事で、子役モデルをお願いしたことが何回かある。カメラの前でキラキラと輝く笑顔で見せてくれる子どもたち。小さいとはいえプロだなあと感心した。
でも、海という自然の中では、自然に遊ぶふつうの子どもたちの表情が欲しい。
カニを手にニッコリ笑顔よりも、おっかなびっくりさわろうとするちょっと不安げな顔の方がいとおしいのだ。
また、海辺の環境はイメージとはかなり違う。
強風、照りつける太陽、うねりなど、意外と過酷である。
何百回と海に通ってきて、これまでに今日は最高のコンディションだったといえる日は、数えても片手で足りてしまう。
そんな場所でやはり無理がきくのは、自分の子ということになる。
まず、海辺で子どもたちが着るウエアにこだわった。
キャラクターや横文字が入っているTシャツは自然の中では饒舌すぎる。
ムスメの手持ちのワードロープをチェックしたら、ほとんどがNGだった。
特にいただき物は王国ネズミの天下…。
子どもが生まれる前、毒々しいアニメキャラのトレーナーや運動靴に身を包んだ派手キャラな子どもたちを見るにつけ、「我が子には絶対にあんな格好はさせないぞ」と心に誓った。
赤ん坊時代はその意志の通り、オーガニックなベビー服を着せおもちゃも厳選した。
ところが、数年たってふと見ると、○ーラームーンがプリントされたショッキングピンクのパジャマに身を包み、きらきら輝く棒(キューティムーンロッドという)を手にクルクルと踊っているムスメ。
どうしてこうなるのか…。答えは簡単である。我が子の喜ぶ顔が見たいから。
特にはとうちゃん。たぶん家中で○ーラームーンに一番詳しいであろう男。ショッキングピンクと金色に輝くグッズを、喜々として買い与える男…。
ここはかーちゃんが主導権を握り、撮影用に無地Tシャツを探すことに。
苦労するかなと思っていたけれど、海に似合うTシャツはすんなりと格安で手に入った。
どこで? ○ニクロで。
さあ、いよいよ海辺のロケがスタート!
Mikiちゃんとムスメのお兄ちゃんお姉ちゃん役として、しーちゃんちのサキとユウタに声をかけた。ふたりとも物心着く前から、ダイバーの両親に頻繁に海に連れ出されてきたので心強い。
ヒロミさんが描いた海遊びの絵コンテに沿って、海がらみの子どもたちを撮影…これが、スムーズに行くわけがなかった。
とーちゃんは生き物の決定的瞬間をとり続けていたので、シャッターを切るまでにえらく時間がかかる。プロのモデルでもない普通の子どもたちが、我慢するには限界があった。
ちょっと撮影しては遊んで、また少し撮影しては休んで、撮影中暑くなったら海に浸かって…。
大変だったけれど、子どもたちとのロケは楽しかった。
海遊びシーンのひとつに、イソギンチャクの水鉄砲というのがある。
潮の引いた磯で岩のくぼみや岩と岩の隙間をよく見ると、触手を縮めて閉じているイソギンチャクをいくつも見つけることができる。
その中のヨロイイソギンチャクは、体に貝殻や小さい石つぶをつけて身を守っている。閉じている触手を指で押すと、チューッと水が水鉄砲のように飛ぶ。次の満ち潮まで体が干上がらないように、海水をたくわえているからだ。



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