第22話 おとなと子どもの海

ムスメとMikiちゃんは競ってヨロイイソギンチャクを見つけては、チューッと水鉄砲を飛ばす。気がつくと、キャッキャとはしゃぐ小さい子を追いかけながら、お姉ちゃんのサキが海水を両手に汲んで水鉄砲の役目がすんだイソギンチャクに水をかけている。
「干からびちゃうと、かわいそうだもん…」
サキの言葉が心にしみた。

海の生き物とのふれあいシーンでは、ただひとりの男子ユウタによく登場してもらった。
カメラを向けるとちょっと恥ずかしそうにする素朴なキャラクターを、ヒロミさんが気に入った。
カニの甲をつまんでカメラに向けるシーンを撮るとき、ユウタはポロリとカニを落っことしてしまう。とーちゃんが「もっとしっかり持って」と再びカニを持たせても、またポロッ。
「もしかして、カニがこわい?」と聞いたら、
「……ウン」と蚊の泣くような声。
母親のしーちゃんがギャハハハ!と笑うのをまあまあと制しつつ、こみ上げてくる笑いをこらえた。
それが男子のプライドを刺激したのか、ユウタは今度はカニをしっかりと持ってカメラの前に立った。さすが、しーちゃん、男の子の扱い方がわかっているなあと感心したのである。

一番年下のMikiちゃんにとって、海辺は過酷な環境だったと思う。
ポーズをとってもらおうとしても「イヤ!」とすねちゃうことも。
ヒロミさんはそんなMikiちゃんをなだめたりすかしたり。ときには本気の親子げんかが勃発した。
海という自然の中で真剣勝負の親子を見ながら、子どもと過ごす喜び(?)ってこういうところにもあるんだなあと思った。

さて、ムスメ。
一人っ子なので、サキ、ユウタ、Mikiちゃんと過ごすときは心底うれしそうだった。
一方で、父親の血を受け継いだのか無類の恥ずかしがり。カメラの前でポーズをとるのは、かなり苦痛のようだった。プライベートでは自然な笑顔が撮れていたけれど、ロケではわざとらしかったり苦笑いだったり…。

このころムスメが一番お気に入りの海遊びは、とーちゃんのダイビング中、静かな湾内でプカプカと浮いたり潜ったりすること。
日に焼けて水をはじくようになった肌は、アザラシやオットセイを連想させた。
マスクもフィンも、ゴーグルさえもつけないで、放っておくと1時間でも2時間でも海に入っている。沖で仰向けに浮かんでいる様は、ラッコそっくり…。
ただ海に漂うことが快感だったムスメにとって、撮影での磯遊びはあまり楽しいものじゃなかった。

このときおとなとこどもが海辺で過ごした、楽しいことや楽しくないことすべてひっくるめて、私にとっての蓄積となった。
そして、親子向けと一般向けの海遊びの本を生み出すことになった。
ヒロミさんととーちゃんによる子ども向けの海の写真絵本も、そのずっと後で(今、まもなく)実現することになる。