第23話 イルカがきた!


漁船が網をじわじわと絞めて、イルカたちを浅瀬に追い詰めていく。
水族館の人々が水に入り、イルカの選別が始まった。
これと思うイルカを決めたら、みんなで協力してイルカを捕獲し、クレーンでトラックに収容する。
しばらくその光景を見ていたが、ムスメがあっちに行きたいと言うので、手をつないで駐車場の方へ歩いていった。
大きなコンテナトラックのそばで、
北の方にある水族館のロゴが入ったウインドブレーカーの女性が、うつむいている。ちょっと年配の男性(同じウインドブレーカーを着ている)が懇々と話して聞かせる。
「もちろん、これが正解だとは言わないよ。でもね」
そこにやはりお揃いのウインドブレーカーを着た若い男性がやってきて、そそっと言う。
「落ちちゃったんで、やり直しです」
あ…と思って、ムスメの手を引いて戻ると、事務所の前にイルカが横たわっていた。
ムスメが私の手を放してイルカに近寄っていった。
そして、近くの水槽から手で水をすくって、イルカの呼吸孔にかける。それを数回繰り返したけれど、イルカはシンとして動かない。ストレスとショックで死んでしまったようだ。

波打ち際に追い詰められたイルカたちと、以前同じ場所に捨てられていたアジのキラキラ光るうろこがオーバーラップした。
F漁港のイルカ漁は、テレビニュースで何度も報道された。
さまざまな保護団体のコメントとともに、漁協の顔見知りのおじさんが、ほとほと困り果てた顔でカメラに向かって言う。
「わがっでぐれよお」。
このとき、ムスメ5歳。ただ、黙ってF漁港を連れ歩いた。
親として、個人的感想や見解は話さなかった。
イルカ漁を見せた私の意図は、果たしてムスメに伝わっているだろうか。
「地球の生き物は、ほかの生き物を食べなくては生きていけないんだよ」
私はこのことを、我が子に教えたかったのだが。
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